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群衆のabdmのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
2.5
大恐慌が続く中、人員削減の対象となった1人の女記者が「どーせ最後だから」と言いアメリカの現状況を痛烈に批判する手紙をジョン・ドーという男から送られてきたと翌日の新聞でその内容をでっち上げた。
彼女は会社の信用を頗る下げるための悪あがきとして記事を書いたつもりが、その新聞が発行されてから、新聞社には俺こそがジョン・ドーだと名乗るホーボーが押しかけてきた。
そして新聞社はその事態を商売に変えるべく、そのホーボーの中から1人の男を雇いジョン・ドーとして厚く迎え入れ、政府に絶望をした労働者として作り上げていった。

メディアによる情報操作に大衆は踊らされ、一度はそのジョン・ドーなる男を信じ応援したが、途中で全てはメディアが作り上げた虚像であると気づき絶望をし、その男を激しく糾弾するのだが、最終的にその男は本当のジョン・ドー(政府に対して激しい怒りを抱える労働者)へと変わり、糾弾していた大衆は、彼を信仰し始め物語は幕を閉じる。

一見彼目線や、メディアや政治を敵と見なした目線でストーリーを追うと結果的に悪事働いてた奴らざまあみやがれエンディングだとは思うが、客観的に観るとゾッとするような結末。
なんとなく同監督の『スミス都へ行く』と内容が似ていて、アメリカ的精神を持つ一般市民こそアメリカを先導するべきだという大衆主義的な思想であったが、それは最後の最後にそういう風にまとめられているだけで、それまではずっとメディアによって思い通りに操られていた大衆を描いている。
なんなら最後だってメディアによって操られたと言っても過言ではない。
変な宗教団体が創始されて終わった。

メディアの扇動がどれほどの影響力を持つかがはっきりとわかる今見てもいつ見ても恐ろしくなる作品。
ホラー映画。
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