ジャイロ

群衆のジャイロのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
4.4
昨夜のこと。仕事帰りに冷蔵庫を開けると衝撃の展開が待っていた。

そんなバカな!!

「イカの塩辛」がぜんぶ無くなっている!

長男「ああ、それ僕。今日、イカの塩辛入りマフィン作ったんだ」

(#゚Д゚)お前かっ!!

しかも何作ったって!?

長男「美味しかったよ♪イカの塩辛入りマフィン」

それ絶対美味しくなさそうだし臭そうじゃね!?冷蔵庫の中のありものでアイデア・スイーツ作る趣味はなんとかならんのか!?しかもよりにもよって楽しみにしていたお父さんのイカの塩辛をぜんぶ使いきるとは何事か!!食い物の恨みは恐ろしいと知れっ!!

…。

(マフィンの甘さ)

(塩辛のしょっぱさ)

(交互にやって来る甘いとしょっぱい)

(甘さに飽きた頃にやって来るしょっぱい刺激)

(しょっぱさに飽きた頃にやって来る甘い至福)

(もしかして)

(美味しいんじゃね?)

(永遠に食べ続けられるんじゃね?)

そのマフィン、残ってない?

長男「残ってない」

まったく、人生は驚きの連続である。


DVDを再生すると淀川さんの解説から始まる

淀川長治さんの世界クラシック名画100撰集(27)


『群衆』


「フランク・キャプラ、ゲイリー・クーパー、そしてバーバラ・スタンウィック、名作ですよ~」って淀川さん、結構ストーリーしゃべっちゃいましたね。かなり核心ついてましたよね。まあ淀川さんらしいと言えば淀川さんらしいんだけれども、ねえ。困ったもんです。

フランク・キャプラ監督の『一日だけの淑女』っぽい匂いもしましたが、なんとなく、ダスティン・ホフマンの『ヒーロー 靴をなくした天使』みたいな話だなあなんて思いながら観てました。こっちが元祖なんだろうけれども。

いつまでもモテ期が続きそうなゲーリークーパーは、やっぱりモテそうですね。今回のジョン・ドウは『モロッコ』や『教授と美女』のイメージをごちゃまぜにしたような感はありました。

バーバラ・スタンウィック、イメージそのまんまのキャラクターは今回も健在です。どの映画もあんな感じなんですね。どこか憎めない魅力を持った女優さん。

そしてなんと言ってもウォルター・ブレナンですね。ピノキオの良心、コオロギみたいなキャラクターが実に味があるんです。お手製のオカリナで合いの手を添えるシーンのなんと楽しいことか。このキャラクターの存在が物語に深みを与えてくれてるんだと思います。

これ、ボール投げてないよね。エア・ベースボール?(笑)

そしてエア・スモーキン?(笑)

思わずクスりとしてしまう、そんな楽しさが散りばめられてて全然飽きさせない。これぞキャプラ・マジック。

「ジョン・ドウ」それは、この映画では、身元不明の遺体のことではありません。どこにでもいる一市民のことなのです。名無しの権兵衛が、あれよあれよという間にスターになっていく。エスカレートの仕方が凄くてなんだか怖いぐらいだ。この辺、実に上手いなあ。

敵が味方になり、味方が敵になる。面白い。なんだおじいちゃん、いいやつじゃん。タバコふかしすぎだけども(笑)

雨のジョン・ドウ全国大会

すごいシーンだ

圧巻

そんな緊迫する終盤に葉巻隠しを挟んできたりと、やっぱり楽しいキャプラ監督。

バカげた話さ

だが確信がある

奴は…奴ははきっと来る

舞い散る雪が静かに降り注ぐ

聖夜に鐘が鳴り響く…

ゲイリー・クーパーがかっこいい!!!

なんだこれは…

涙?

涙が溢れてくる

感情が溢れてくる

バーバラ・スタンウィックがなぜ気絶したのか分からないけど、とにかくいいシーンだなあ。ラストの台詞も粋だから、キャプラコーンの味はやっぱり大好きです。

始まりは楽しくて

盛りに盛られて大きくなって

やがて不安に変わるけど

それはどこかでずっと燻っている

ほんのりとした恋の香り

突き動かされる善意の群衆と闇で蠢く恐ろしい悪意

そしてグッときてしまう終盤

ひとつの映画でいろんな味がするもんだから、もうね、イカの塩辛マフィンも食べてみたい。もう一回あれ作ってよ。イカの塩辛マフィン。

長男「イカの塩辛が無いから無理」

確かに!!