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横道世之介のTSのレビュー・感想・評価

横道世之介(2013年製作の映画)
3.7
【ごく普通の大学生活だが…】78点
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監督:沖田修一
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:160分
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歴史に名を残さないごくごく普通、しかし少し変わった横道世之介という大学生の1年間を追った青春ドラマ。一言でいえば儚い。その時覚えてもらっていても、時が経てばやがて忘れられていきます。ちょうど『リメンバーミー』でもそのようなものがテーマであったためタイムリーな鑑賞となりました。

法政大学に入学した横道世之介はごくごく普通の大学生活を過ごす。なんとなく推されて入ったサンバのサークル、ホテルのバイトで目につけた千春との出会い、ダブルデートの時に出会う世間知らずのお嬢様など。彼と出会った人は不思議と彼の行動力に導かれていくのだが。。

大学に入学してからのシークエンスは個人的に結構好き。大学入りたてってこんなものですよねー。中学高校と違いクラスなんてものもないし、周りの人は知らない人だらけ。不自然なほどにも自分から声をかけていかないと友人を作っていくのは難しいでしょう。しかし、この世之介という主人公はそれが得意であり、徐々に知り合いを増やしていきます。

物語は淡々としていますし160分もあるので好みが分かれるかもしれませんが、多くの人が共感しやすい普通の物語というのはウケが良い気もします。そして所々に、この16年後の映像が流されるのです。世之介と関わった人たちが、ひょんなことから世之介のことを思い出すのです。この世之介の一年間というのは1980年代後半。携帯も普及していない時代であるため、たかだか大学で一年知り合った人と連絡先を交換しているのは稀なことなのでしょう。そういえばそんな奴いたなあ。面白い奴だった。と、節々に世之介と関わってきた人は思い出して言うのです。このシーンを見て、僕も大学の頃を思い出しいろんな人を想像しました。中学高校の友達というのは地元ですし同窓会などあるのでこれからも会える確率が高いのかもですが、案外大学で知り合った人が今後中々会えない人たちになってくるのかもしれません。

今作の仕掛けも唐突に、普通に流されるので巻き戻して二回見てしまったくらいです。そして思いました。自分のニュースなど一呼吸するくらいの一瞬のものに過ぎないということを。その仕掛けは中盤に流れるので、誰もが結末をわかってしまったまま続きを見ていくのです。これが良いのかどうかは定かではありませんが、この点において今作は中々の異色作であると思えます。

これから大学に進学される方は、大学生の平凡な生活がどんなのか気になると思うので参考程度に見るのも良いかもしれません。なんとも言えない魅力を持っている作品だと思いました。
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