みかんぼうや

秘密と嘘のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

秘密と嘘(1996年製作の映画)
3.8
本来なら最も信頼がおけるはずの血の繋がった家族の間でさえ、その大切な人間関係を保つために必要な“秘密と嘘”がある。しかし、その“秘密と嘘”によって、無意識のうちに作られてしまう見えない壁ができあがるのもまた事実。

大切な人を傷つけたくないからこそ生まれる壁。

作品終盤まで、揉め事を回避し平穏無事な家族関係を無意識のうちに保とうとする登場人物たちの会話が、傍から見るととても表面的で、どこかよそよそしく胃がキリキリするようなもどかしさを感じる。が、終盤に“秘密と嘘”の壁を崩していくシーンは、“真実を共有する恐怖”との闘いでありながら、その先にある真の信頼関係を構築する絶好のチャンスでもあった。

ただ、これはある意味ギャンブルで、真実を伝えることが必ずいい結果に結びつくとは限らない。真実を聞いた人間たちが理解・受容しようとせず、ただ抵抗していたとしたら、その人間関係は破綻しかねない。そういった意味では、本作で数少ない男性であるモーリスと黒人女性のホーテンスが非常に大人であったことが本作の微妙な関係性における最大の救いであった。

“秘密と嘘”で守られるものと、それによって手に入れられないもの。その微妙な心理描写が面白い良作だった。
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