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シシリーの黒い霧のslowのレビュー・感想・評価

シシリーの黒い霧(1962年製作の映画)
4.1
50年7月、シチリアでサルヴァトーレ・ジュリアーノという若者の射殺体が発見された。彼は一体何者であり、何故殺されなければならなかったのか。カメラは真相を探るべく時を遡り、観客を数年前のその場所へと連れ出した。

シシリー島で起こった独立運動と、そこに流れた多くの血。ドラマは然程感じないけれど、ドキュメント性が強く、且つそれを芸術映画として見せる画力が凄い。フランチェスコ・ロージの作品は初めて鑑賞したけれど、社会派という以前に、やはり映像にとてつもないセンスを感じる。まるで、激動の時代をバキッと強めのコントラストでそのままフィルムに焼き付けたような鋭利なモノクロの世界。ロケーションにも注目したい。華やかさだとか整然とした街並みの美しさではなくて、風土を感じる建造物が高低差を物ともせず建ち並んでいる様に逞しさを感じる。大袈裟に言えば『インセプション』の捲り上がる都市を地で行っているようなインパクトある立体感がそこにはあった。

独立義勇軍、マフィア、政府。複雑化する勢力図の中で、ジュリアーノが担った役割と死に至る罪とは何だったのか。太鼓の広報係、謎の楽器を奏でる男。暗闇に点々と佇む影。命の火を消す死のストロボ。不穏で不気味な音と影の中で、真実は何処まで明らかになるのだろうか。
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