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ニック・オブ・タイムのスペクターのレビュー・感想・評価

ニック・オブ・タイム(1995年製作の映画)
3.7

ジョニー・デップは、本当の役者である。 素晴らしい!

映画 『ニック オブ タイム』 の主人公、ジーン・ワトソンは警官を装った男女に娘を人質にとられ、カリフォルニア州知事の暗殺を強要されるという破天荒なサスペンスアクション。

会計士であるジーン・ワトソンはサンティアゴでの妻の葬式から戻る途中、ロサンジェルス郊外のユニオン駅に着いてすぐの惨事に遭遇した。

ユニオン駅にある時計台が12時ジャストを示しているシーンからこの映画は始まる。
主人公をはじめ、腕時計を盛んに見る場面があちこちにある。
原題 “NICK OF TIME”、邦訳「差し迫った」「間一髪」を予兆させているのだ。
現に、13:30 娘の命のタイムリミットを宣告されたのである。 

90分の時限とこの映画の放映時間89分、
どう見ても同時進行させるしかなく
観る者の臨場感を狙ったというほかない。

ジーン・ワトソン役のジョニー・デップ、この時32歳、バカ派手なコスプレでイメチェンを図った『パイレーツ・オブ・カリビアン』や『ローン・レンジャー』を始める8年前である。
普通にそこらの駅にいそうな素人、しかも差し迫った“にいさん”を見事に演じ切っている。
素顔の、生のジョニデが、本当の役者がそこにいた。 

キャスティングもすばらしい。
*クリストファー・ウォーケン: 偽刑事の悪者役。 映画に緊迫感を持たせたのは唯一彼の存在感である。 反面、マヌケの要素も併せ持つ、余人をもって替え難しとはまさにこの人のことだろう。
*チャールズ・S・ダットン: 靴磨きの元傷痍軍人役。 適役。 頭が下がる。
*マーシャ・メイソン: 州知事役。 自分の暗殺が企てられている、しかも夫も関わっている事実を悟る前後の感情の動き、コントロールされていて実に上手い。

演説会場にいる夫を含め、警備関係者すべてがグルである......想定外であった。
ただ一人、知事を凶弾から自ら身をもって守ったボディーガードがいた.....これも想定外。
素人を暗殺者に仕立て、実行後撃ち殺し計画事体を闇に葬ろうとしたのだろう、中国人のビデオカメラマンまで配置する用意周到さ。 
しかし、一番肝心要メを素人に託すという“脆さ”に気が付かなかったのである。
靴磨きのほか、ホテルの職人たちの身体を張った協力は、この映画に花を添えている。
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