Marrison

宝石泥棒のMarrisonのレビュー・感想・評価

宝石泥棒(1962年製作の映画)
4.0
「お洒落映画の傑作」と聞いたから観に行かなくっちゃとなったんだが────
まずは、スタア映画でした。次に、巧い映画でした。そして一応、洗練されてる方かな。

三つ巴ストーリーがわかりやすい。ダイヤ泥棒⇔恋泥棒、のスイッチ構築もナチュラル。
屋内シーン多く、主要な六人がほぼ全人物な感じなので、TVドラマ的な気安さ。あるとするならば映画の醍醐味は、まずはスタアたちの在りように探せということかな。
台詞を言ってない時の川口浩さんと野添ひとみさんのまなざし演技が、最初からすばらしかった。外国人のようには表情が豊かじゃない日本人だって、こんなにも目線と顔の少々の振りだけでその場その場の大切なピースになれるなんて、さすがプロ。
邦画黄金期の至宝・山本富士子さんは、もういつも通りに美形です。あんな高い鼻に生まれついたら誰だって女優めざしちゃう。主役の彼女の(意外なほどの)ぽっちゃりな?魅力を捉えたアングルが本作では多い気がします。それに、ファン向けにか彼女だけはアップがたくさん。
その富士子、後半の窓辺の伝い歩きのところ、命綱もなしに頑張ったね! 見えてる以上に大変だったはず。ハイヒールであんなことナカナカできないよ。。
野添さんは、鼻が低いのでロマンス担当の一人へと祭り上げられるとちょっと苦しくなるところ、本作では“女中”扱いの犯罪方面アシストをひたすら快く引き受け実直な働きぶりです。
船越英二さんに至っては、“二枚目半こそボクぁ天職”と言わんばかりに若い皆を包むようにカンツォーネを唄いっぱなしでこれまた良きジョブ。さらに“ハッとさせる可笑しさ”をプレゼントしてくれました。鏡の割れるシーンで!
そのほか菅原謙次さん扮する“プチ探偵”がまた渋いような酸っぱいようなイイ味を出し、(これは脚本担当の教養の勝利だけど)“わがベスト探偵小説”の第7位に乱歩の知る人ぞ知る超傑作『心理試験』を挙げるなどすばらしい台詞をペラペラしていきますが、、、彼にしばしばエスコートされたイケてない盗まれ役の角梨枝子さんは、イケてない美マダム感の出し方は適切ながら、演技者としてクシャミが下手くそすぎ。

そういうわけで、お洒落意識高い映画という以前に、普通に面白い娯楽作だった。何度もの落水には笑えたし、射撃シーンは嘘っぽくも何だか新鮮に映ったし、外車やリップスティックやウィッグとかの使い方にも当時の演出家たちの精一杯が見て取れる。
でも、フランス映画の洒落感の凄さは、例えば主演らよりもむしろどうってことないエキストラたちの中に超絶的な美男美女がごろごろいるところだったりするのだけど、、、、この映画の残念なところは、スタア六人以外に一切目が向かないようにしてある点。それと、黴の生えかけた音楽&スローダンス。モダンジャズ多用で行ってたら(勝手な21世紀目線的にも)時代超越作になってたのに、あくまでも「全盛期の大映の宝物」にとどまってる、とわずかに惜しむ。