[自由とその退屈さ、そして永続する幻想] 99点
追悼モンテ・ヘルマン。車がほとんど走ってない田舎の道をひた走るような自由さと、その本質的退屈さの映画。車とレースにストイックすぎて、所謂ニューシネマ的な溢れ出る反抗精神も無駄なバッドエンドもなく、そもそものアンチヒーローすら不在で、ただただ永遠に続いていくだろう物語にひれ伏すのみ。今でもまだ、彼らはどこかへと続く道を走っているんだろうと思わせるような超越的な時間が流れている。車のこと以外口下手で意思疎通もほぼしない若い男たちと、逆にスキあらば自分語りをしたがるおじさんの間を揺れる永遠のミューズ=ローリー・バードが忘れがたい。若者に説教しながらも"早く居場所を見つけないと、俺は永遠に道に迷う"と零すオーツの哀愁に泣きたくなった。永遠に続く幻想を遺してくれてありがとう、モンテ・ヘルマン。安らかに眠れ。
※追記
よく考えたら、目的を持って西へ進むこと=マニフェスト・デスティニーの真逆で、目的もなく東へ進むことがアメリカンドリームの解体の直接的示唆なのかもしれない。