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断絶のROYのレビュー・感想・評価

断絶(1971年製作の映画)
4.0
ジェームズ・テイラー、ビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソン、そしてH・D・スタントンが出演している

イージー★ライダー/バニシング・ポイントの道に新しい閃光を放つ問題作!

アメリカン・ニューシネマの秀作としても知られるロード・ムービー

車でアメリカ中を渡り歩く3人のストリート・レーサーたちを描く。ニューシネマの野心作として製作するも興行的に惨敗、ヘルマン監督が映画製作から遠ざかる結果を残した伝説的な一作。(https://jackandbetty.net/upload/timesheet/pdf/A4sche120218.pdf)

『Internet Archive』で鑑賞

■INTRODUCTION
『イージー★ライダー』でワイアットとビリーが求めたアメリカン・ドリームは『バニシング・ポイント』でコワルスキーが夢破れつつもみせた自由への疾走に変容し、ついには『断絶』で空疎な空気と閉塞感、疎外感とともに存在することがすべてであることとなった。(Screen Online)

■STORY
ストリートレースで得た金を手に、チューンナップしたレース仕様の1955年型シェビー・ベルエアでロサンゼルスから離れたザ・ドライヴァー(ジェームズ・テイラー)とザ・メカニック(デニス・ウィルソン)。道中でザ・ガール(ローリー・バード)を拾うと、新たなストリートレースの相手を探すべく南東へとシェビーを走らせる。とあるガソリンスタンドで、ポンティアックGTOに乗る中年男(ウォーレン・オーツ)に出会った一行は、彼にお互いの車を賭けた大陸横断レースを持ち掛けるが……。

■NOTE I
55年型シェビーは映画のために3台用意され、うち1台は2年後の1973年の映画『アメリカン・グラフィティ』で塗装されて再度使われている。この車に乗ったのはまだ無名だったハリソン・フォード。対する70年型GTOは、ジョン・デロリアンが開発に携わったことで知られる、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するデロリアンで有名な人物だ。

中野 充浩「断絶〜“2人の有名ミュージシャン”が主演したロードムービーの衝撃」『TAP the POP』2021-07-08、http://www.tapthepop.net/scene/50713/amp

■NOTE II
1971年のアメリカ映画『断絶』は、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの門下生だったモンテ・ヘルマン監督初のメジャースタジオ作品。『イージー★ライダー』(69)の大ヒット以降、従来の大作映画の不振によりメジャースタジオが苦境に立たされていた状況下、ユニバーサル映画がピーター・フォンダ監督『さすらいのカウボーイ』(71)、デニス・ホッパー監督『ラスト ムービー』(71)とともに起死回生の若者向け企画として仕掛けた野心作。

(中略)

映り込むものすべての行動原理は排除され、観る者の感情移入も受け付けずに喪失感だけが漂う。もうひとつの『イージー★ライダー』として題材、物語、キャストなどあらゆる面で”売れる”期待を集めた本作。しかしヘルマンはその商業性をすべて排除、ロードムービーとしての純度を極限に高めることにこだわった。その結果スタジオと対立し、不幸な公開形態を余儀なくされた 『断絶』は興行惨敗に終わり、ヘルマンは以降一度もメジャースタジオで作品を撮っていない。

「“もうひとつの『イージー★ライダー』”モンテ・ヘルマン監督『断絶』ブルーレイ発売決定!」『Screen Online』2020-03-06、https://screenonline.jp/_ct/17347030

■NOTE III
まるで感情を伝える術を失ったかのような3人の男達は車を意思疎通の装置としてたわいのない意地の張り合いをするが、その底に透けて見えるのがそれぞれが抱える断絶と孤独である。特にウォーレン・オーツ演じるGTOはペラペラとよく喋りながら全く内容のない嘘の身の上話をし、拠り所を初めから持たないシボレーの若者達と違って、中年の実存的危機を抱えた落伍者であり虚偽のプライドにすがって生きる前世代の価値観を引きずっている。この映画はそんな人間達に「マッスルカー」や「ヒッチハイカーの若くて魅力的な娘(「ガール」)」という要素をストーリーに盛り込みながら、期待されるようなドラマをことごとく避けて展開する。

石川俊樹「【カルト映画研究会:第5回】断絶(Two-Lane Blacktop)」『Antenna』2020-07-13、https://antenna-mag.com/post-44653/

■NOTE IV
6位
ザ・ドアーズ「月光のドライヴ」
『断絶』(1971年)

1955年製のシボレーに乗ったジェームズ・テイラーとデニス・ウィルソン。ロックスターの二人が、ヒット作となったモンテ・ヘルマン監督のインディー映画に登場した。究極のリアルなロードムービーだ。2人が演じるヒッピーの詐欺師がとあるニュータウンへ流れ着き、地元のホットロッド・スポットで大金の動くドラッグレースへ誘い込むカモを探す。2人がハンバーガーショップの駐車場にたむろするタフガイたちと出会うシーンではドアーズが流れ、マッスルカーの傍らで良き時代がやって来るのを待つ。しかし良き時代など既に過ぎ去った、と曲は告げる。

Rob Sheffield「最高のロックをフィーチャーした、映画史に残る名シーン30選」『Rolling Stone Japan』2020-08-08、https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34405

■ADDITIONAL NOTES
公開の数年後、ローリー・バードは恋人アート・ガーファンクル宅で自殺した。

『イージー★ライダー』がアメリカ社会の病巣をえぐり出したのに対して、『断絶』は人間の心に焦点を当て、そこに潜むニヒリズムと諦観を描き出している。

米雑誌『エスクァイア』は公開当時、この映画を“1971年の最も重要な映画“と評した。

(『ラストムービー』について)当時、ユースカルチャー市場を取り込むために、予算100万ドル以内で監督に最終編集権を保証するかたちでピーター・フォンダの『さすらいのカウボーイ』(1971年)、モンテ・ヘルマンの『断絶』(1971年)、ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(1973年)とともにユニヴァーサルが製作した一本だ。

■MUSIC
◯ドアーズの「Moonlight Drive」
◯クリス・クリストファーソン(Chris Kristofferson)の「Me and Bobby McGee」
◯ジェリー・リー・ルイスが歌う「Hit the Road Jack」
◯アーロ・ガスリー「Stealin'」
◯ローリー・バードが口ずさむストーンズの「Satisfaction」、ジョン・ハモンドの「No Money Town」など

https://open.spotify.com/playlist/6IQsZ57Zv1OqbJOajcRV0J?si=wHRKRoLST66PL6-nKUIwQg

■CARS and other vehicles(IMCDb)
◯1969 AMC Javelin
◯1953 Chevrolet 3100
◯1961 Chevrolet Biscayne
◯1963 Chevrolet C-10
◯1968 Chevrolet Camaro
◯1969 Chevrolet Chevelle
◯1963 Chevrolet Chevy II
◯1970 Chevrolet Concours
◯1964 Chevrolet Corvette Sting Ray C2
◯1965 Chevrolet El Camino
◯1970 Chevrolet El Camino
◯1969 Chevrolet Impala
◯1969 Chevrolet Nova
◯1955 Chevrolet One-Fifty
◯1949 Chevrolet Styleline De Luxe
◯Custom Made Ford Model T Altered Alcohol Dragster
◯1949 Diamond T 306
◯1970 Dodge Charger
◯1969 Dodge Charger Daytona
◯1968 Dodge Coronet
◯1960 Dodge CT-Series
◯1967 Ford Country Sedan
◯1960 Ford F-100 Panel
◯1965 Ford F-Series
◯1969 Ford F-Series
◯1965 Ford Fairlane
◯1956 Ford Fairlane Crown Victoria
◯1930 Ford Model A
◯1970 Ford Ranchero
◯1970 Harley-Davidson XLH Sportster
◯1962 International Harvester Loadstar
◯1965 Mercury Colony Park
◯1967 Mercury Cougar
◯1966 NSU Prinz 1000 TT
◯1968 Oldsmobile Cutlass S
◯1970 Plymouth 'Cuda
◯1966 Plymouth Barracuda
◯1967 Plymouth Barracuda
◯1970 Plymouth Duster
◯1967 Plymouth Fury
◯1969 Plymouth Fury
◯1966 Pontiac GTO
◯1967 Pontiac GTO
◯1970 Pontiac GTO
◯1966 Volkswagen Squareback Sedan

■COMMENTS
レースとかはするけどこの特に何も起こらない感じ好き
ROY

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