明石です

断絶の明石ですのレビュー・感想・評価

断絶(1971年製作の映画)
4.5
55年式のオンボロ車を修理して乗り続けるデトロイト出身の時代遅れの若者2人と、派手なポンティアックを乗り回し、ヒッチハイカーを快く乗せては嘘の経歴を聞かせ続ける淋しい中年男。そしてヒッピー風の美少女の4人が織りなす奇妙な四角関係。70年代アメリカを取り巻く虚無の世界をひたすら静寂に包まれたカーレースに載せて映し出した異色のロードムービー。

ポスト『イージーライダー』と目されるも、そうした商業的な売り出し方に反感を覚えた監督の意向で、誰に需要があるのか、同作とは似ても似つかぬ観念的なロードムービーに仕上げ、興行的に大失敗。しかしのちにカルトムービーとして一部のファンの間で伝説となった作品。『イージーライダー』のような破天荒さはおろか、同時期に製作されたバリバリのアメリカンニューシネマ、『ダーティメリー・クレイジーラリー』や『バニッシング・ポイント』のような派手なカーアクションも皆無(派手なエンジン音で幕開けるのに!)。

いかにも70年代初頭らしいのは、純ヒッピー風のヒロイン。『ダーティメリー』のスーザン・ジョージと重なるような、金髪にジーンズ姿で、男を惑わせ、虜にしては、色恋などいっときのシャレードゲーム以上の何物でもないと言わんばかりにくるりと背を向け、別の車に乗り込んでサヨウナラ。結局こういう人が一番魅力的なんだよなあと思ってしまう。自分はこういうタイプにはなれそうにないから余計に笑。ズルいね。

窓の外に映るのは果てしなく広がる何もない景色であり、それを映す彼らの目も心ここに在らずなのが印象的で、時代に置いていかれ、現実の世界に着地できずにいる4人が、四者四様に虚無の世界を彷徨う姿は哲学的でさえある。まさに観念的なロードムービー笑。1回で全てを理解することは不可能で、何度も見るほどに旨味を増しそうな感じ、今でもミニシアターで根強い人気を得ている理由がそれとなくわかる気がする。
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