初のトーキーということで有名な作品。ジャズシンガーを目指すユダヤ司祭長の息子が、アメリカの「白人文化」とユダヤの伝統との間で葛藤する話。テンポがよく、話も整理されていて見やすい。ただユダヤ移民二世である主人公が同化しようとする白人社会の代表として描かれているジャズ音楽は元々黒人のものだし、最後に黒塗りをするところとかは、本作では全く登場しない黒人の存在を想起させるし、そのことが若干物語を複雑にしているような気もする。とはいえ、1920年代にあたってここまでユダヤ系の人々の文化や社会背景を正面から扱った映画というのは画期的だったんじゃないかと思う。