note

エンゼル・ハートのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

エンゼル・ハート(1987年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

1950年代のブルックリン。私立探偵ハリー・エンゼルの元に、ルイ・サイファという男から高額の依頼が舞い込む。それは、大戦後に失踪した人気歌手ジョニー・フェイヴァリットを探してくれという内容のものだった。彼は早速調査を開始するのだが、行く先々でジョニーを知る者が殺される不可解な殺人事件が起こる……。

古典的でハードボイルドな探偵物語とオカルト・ホラーの融合が素晴らしい作品。

ハリーの捜査中、ジョニーを知る人物たちが次々に悲惨な末路をたどる。
その殺され方は奇抜、かつグロテスク。
また、南部のブードゥー教の儀式が登場し、ニワトリが血を撒き散らし、悲惨な姿をさらす。
ホラー調の場面は悍ましく残忍だ。

一方で、換気扇や降下するエレベーター、らせん階段など、光と影のコントラストの効いた映像が、謎めいた雰囲気を盛り上げていく。
また、黒人の子供がタップダンスを踊るカチカチと靴の鳴る音、ドクドクという心臓の音が、何かが迫りくる不気味な感覚を生み出す。

オカルト・ホラーの妖しさとハードボイルドのムーディな雰囲気が同居している。
次々に判明する事実が現実離れしていて、ハリーでなくとも、俄かには信じられない。
南部出身のジョニーは、若い頃からブードゥー教に精通しており、彼の幼馴染の恋人イバンジェリンはブードゥー教の巫女だった。
黒魔術を極めたジョニーは悪魔を呼び出し、魂と引き換えに歌手としての成功を手に入れ、ニューヨークに出た。
この時にイバンジェリンとの間にもうけた娘がブードゥー教の儀式で出会うエピファニー。

しかしその後、ジョニーは悪魔に魂を渡すことを恐れ、悪魔を出し抜くことを考える。
黒魔術にのめり込んでいた富豪の娘マーガレットが、ジョニーに協力。
ジョニーは若い兵士をホテルに誘い込み、黒魔術の儀式を行う。
ジョニーは若い兵士から心臓を取り出して食べ、兵士の身分を奪ったのだった…。

【ここからネタバレ】

その若い兵士の名前は、ハリー・エンゼル。
ハリー自身こそが、探していたジョニー本人だった…。
ラスト、ルイ・サイファ=ルシファーが悪魔の目を光らせて、ハリーを殺人者として告発する。

友人や恋人を次々に殺させ、実の娘エピファニーと肉体関係を持たせた上に、告発される生き地獄。
サイファーがハリー=ジョニーに与えた罰は、相当に残酷で厳しいものだ。

事件の先に待つのは電気椅子による死刑だが、ハリー=ジョニーの苦しみは肉体の死だけでは終わらない。
彼の魂は地獄に堕ちて、永遠に苦しみ続けることになることが想像されるエンディング。

犯人が実は自分だった…。
90年代のサイコサスペンスの流行で、多重人格が認識された今でこそ、こういう「犯人は実は自分だった」というどんでん返しのオチの映画は沢山あるが、この頃はかなり斬新。
ミッキー・ロークがやさぐれた探偵を色気たっぷりに熱演。
片目からハラリと落ちる涙は、後悔とナルシズム、そして地獄へ落ちる覚悟が入り混じる。
いまだミッキー・ローク最高の演技だ。

難点は悪魔役のロバート・デニーロが明らかに怪しく、目が光る演出が即物的なことか。
全く違うジャンルの物語が雰囲気たっぷりの映像で融合していく。
いまだに唯一無二の個性を放つ作品だ。
note

note