東京上空いらっしゃいませの作品情報・感想・評価

東京上空いらっしゃいませ1990年製作の映画)

製作国:

上映時間:109分

ジャンル:

3.9

「東京上空いらっしゃいませ」に投稿された感想・評価

machida

machidaの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

不慮の事故で亡くなった新人モデルが地上に舞い戻る話。

チープさや不完全さ、いびつさも丸ごと愛してしまいたくなるような作品。

牧瀬里穂が死を目前にして初めて生を実感し、キラキラと輝き出す。未完成でいびつだけど唯一無二の存在感がある。


あとやっぱり「帰れない二人」が良い。

結婚式の二次会が開かれているライブハウス。新郎新婦、参列者を前にして歌われる「帰れない二人」。
ひとしきり盛り上がったあと、新郎新婦と参列者たちは舟へ乗りいなくなってしまう。
ユウにも約束されていたはずの将来との、人生との決別が悲しくも美しい。

世界に取り残された二人に与えられたわずかな時間が
ずっと続けば良いのにと願わずにいられなかった。


”もう星は帰ろうとしている 帰れない二人を残して”。
堂ノ本

堂ノ本の感想・評価

4.2
傑作。動き回る牧瀬に、さりげに動き回るカメラ、冒頭と終盤の反復と差異、ただこれを撮るために撮ったかのような完全性。
帰れないふたり
もう30年近く前の話になるのか。

JR東海のCMでクリスマスエクスプレス、ってのがありました。
山下達郎の「クリスマスイブ」をバックに女の子が、駅でクリスマスプレゼントを手に彼氏を待つってシチュエーションのCMで放映当時、爆発的に話題となりました。

そのヒロインを演じてたのが、牧瀬里穂さん。当時、宮沢りえさん、観月ありささんと共に大人気で。

その牧瀬里穂さんの映画デビュー作が本作。

確か新宿の映画館で観たんだよな、当時。鶴瓶さんのことは覚えてるんだけど、あとはすっかり忘れてて。多分当時はそんなに印象的な映画ではなかったんだと思います。自分にとって。

今回、たまたま古本屋さんの店頭で100円で売られてたビデオテープを発見して購入。久しぶりに観てみると。。。

凄く良かった(*^^*)!

ファーストシーンの印象はなんか古い感じだなあ、と。中井貴一さんが着てるスーツも牧瀬里穂さんのヒラヒラアイドル衣装も鶴瓶さんの(一人二役)イヤな上司っぷりも天使っぷりも。

でも、観てるうちに牧瀬さんのあまりのかわいさにびっくりしつつ引き込まれていき。。。

相米監督と言えば、長回しですが、それがとっても良い効果産んでいます。

あるワンシーンで牧瀬さんがファーストフード店でアルバイトしてて、客が急に大量に来てしまっててんてこ舞い、みたいなシーンをワンカットで撮ってるんですが、そのシーンが堪らなく可愛いです。

ストーリーは、キャンペーンガールの女の子が事故で天国に向かう途中に出会った天使にお願いして現世に戻り、つかの間の青春を楽しむ、というもの。

限られた時間を目一杯過ごす牧瀬さんの様子がとってもよく撮られてて、アイドル映画として素晴らしい出来だな、と思いました。

相米監督恐るべし。

なんか埋もれちゃった作品だけど、思わぬ佳作が観られて大満足でした(*^^*)!
天真爛漫過ぎる死者。
もし今なお健在なら本作が一層進化したシニカルな喜劇が生まれていたに違いありません 相米慎二「東京上空いらっしゃいませ」

まずが由々しき話から
相米慎二という名を知ってはいるが相米慎二が誰なのかを知らない若者が増殖しております。
かくいう私の周りにも「お引越し」という素晴らしい映画は知ってるが、(誰の映画だっけ?)とか、「ションベンライダー」というタイトルに対しては(ピンク映画?)と連想したりする若い人が3人います。
更には「台風クラブ」は知っていても「ラブホテル」「魚影の群れ」は(どこかで聞いたことあるけど知らない)
「セーラー服と機関銃」は知っているが「光る女」そして本作「東京上空いらっしゃいませ」などになれば(え?そんな映画あった?タイトルさえ知らない)

世代的な分類ではなく、これから本格的に映画を学ぼうとする芸術専科の学生たちの間に、です。

その理由は相米本人が自分を秘密のヴェールで隠したような生涯を送ったわけでは勿論なく、彼自身が自分が撮りたい映画の半分も撮らないうちに夭折した悲運からきております。

確かに相米を知らなくても映画は撮れますが、映画そのものを知らなければ話にならぬ。
相米を知らないというのは、(21世紀の映画の現在形)の礎の一部が欠落しかねない、という意味になるぞ、というくらいは80年代世代としては言っておきたい気がします。

「東京上空いらっしゃいませ」は賛否両論の嵐に翻弄された前作「光る女」より遥かに、そして予想通りにあっさりと置いてけぼりをくらいました。

(死)から始まるこの作品の珍道中が悲嘆にくれるのを優位とするような風潮を完全に拒み、バブル景気がもはや幻想に過ぎなかったと気づいた80年代後半~90年代はじめの当時の人々には容認されなかったからです。
(つきあってられん)

ですが同時期に公開された同じ牧瀬里穂が主演する市川準「つぐみーTSUGUМI」のように安易なスノビズムで自堕落になるより、相米のように落胆した時代にこそ、潔く悲劇の快楽を自戒する、という貴重な振舞。
それは世紀末から新世紀にかけての映画の推移を紐解き見渡せば
「鉄拳」「王手」「トカレフ」の阪本順治、「バタアシ金魚」の松岡錠司などの出現に留まらずオリヴェイラやカウリスマキらの開花に至るまで、21世紀に生きる私たちの在り方として遥かに建設的であったことは明白です。
悲劇が優位に立つ時代など20世紀で終わらせれば良いのです。
オーソンウェルズがシェークスピアの『リア王』を実現させていたら?と同じくらい相米慎二が武田泰淳の「富士」を実現させていたら?という貴重な仮説が映画界には存在します。
もし実現していたら21世紀に生きる今の若い観客からさぞかし壮大かつシニカルな笑いを無制限に誘発していたことだろう、と「東京上空いらっしゃいませ」を観直しながらしみじみと思うのです。
ホイチョイの勢いが好き
陽水の帰れない二人が良すぎ
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