アヒルの子の作品情報・感想・評価

アヒルの子2005年製作の映画)

製作国:

上映時間:92分

3.8

「アヒルの子」に投稿された感想・評価

発熱

発熱の感想・評価

4.5
子どもって、子どもって。
笑顔を向けるのに傷ついて悲しんでいるんだね。親は良かれと思ってやっているのに。
印象的だったのは、長男の開き直り。
実を言うと決して作品の主役である小野さやか監督に共感した訳ではない。大事な自身の家族の問題だからといって、なぜこうも過去の事に拘って死ぬや生きるやという事になるのか、若者というのはこれから自分がやりたい事を一生懸命やってその結果何者になれるのかという事に必死で、監督が実際に持ってしまっている様な悩みに囚われてる暇はないのが普通なのではないのかと個人的には思わずにいられない。
しかし、同じ様な悩みを持つ人達が数多くいるはずだという事も僕もそう思うし、興味はとてもある問題である。
共感出来る事が映画の面白さだとは決して思わないのだが、問題を理解し抱えている人の気持ちに寄り添うという事は、特にミニシアターで映画を観る事の大きな要素の1つである。
本当に観た日の前日位にふらっと思いついて予定に入れたのだが、とても並外れたパワーを持つドキュメントであり、感動して結構泣いてしまった。

とにかく物凄く気に入って、声の届く範囲に精一杯観賞を呼びかけたこの作品、ところが実際大阪十三でのリバイバル上映期間はたった1週間で昨日で終了している。
この作品が再度上映され皆さんが観賞するためには、小野さやか監督が小林勇貴監督にでも頼んで、上映にストップをかけている家族ひとりひとりの殺害を計画するしかない様だが、あまりそうした方面に走らず次回作も上映が始まっている事だし、新たな創作活動などを行いながら、前向きな精神を保って元気にしていただきたい。
幼少期のトラウマから逃れられず、家族といういちばん近い共同体を壊したいと語る小野さやか監督のセルフドキュメンタリー。家族はもちろん、やっぱり自分と向き合うことが一番怖くて勇気がいることやなって思った。監督があれだけ自分をさらけ出せるのもスゴイと思うけど、家族が撮られることを許してることも普通じゃない絶対。実際許可撮りで公開までに数年かかかったみたいやし。理解しあえないこともお互い抱えあって生きていくのが家族なんじゃないかと
映画学校で同期なのでむかし学校の発表会で作りたてホヤホヤを見た。
好きだったな。
mingo

mingoの感想・評価

4.0
タイトルは醜いアヒルの子とも掛かってるんだけど、アヒルが好きだけど自分は嫌い、アヒルという偶像物なら愛せるから、という意図が割とこの映画すべてを表していると言っても過言ではない。
本作を観る際おすすめしたいのは良し悪しを置いといて、映像として非常に観る価値のあるドキュメンタリーになっているのは間違いない。
20歳前後の多感な時期に人生における迷いや悩みを経験したことのあるひとには突き刺さる一本でもあるのだが、小野さやかという1人の女性がじぶんの人生を振り返るという行為は鑑賞者に自ずとフィードバックできるから、泣いて笑って怒って感動してなかなかエネルギーがいる作品にもかかわらず、長い旅路を終えたような実感があって、観終わったあとの多幸感はなかなかなもの。
両親に「愛されていない」と傷を負った5歳、幼い頃に兄に性的悪戯を受けた10歳、結局人の痛みはその人自身にしかわからないけど、その根源を追うことで、ひとは成長できるし気づけることって本当に大事。傑作「ショートターム」が好きなひとにこそ観て欲しいドキュメンタリーの傑作。あと上映は明日一回のみ。
覆されました。
生きる事に本当に真面目で、物凄く泥臭い。
戦時中の国のドキュメンタリーも泥臭くて胸に刺さるけど、日本も泥臭いんだよな…と気付かされました。

どれだけの人が家族や自分について、適当に流さずにぶつかってるでしょうか?
「家族とは何度もぶつかったけど、乗り越えて強い絆がある」程度では適当に流してる部類です。
勿論私は「適当に流してる」部類です。
ぶつかるとは、この映画の様な事を言います。
家族は、ぶつかると崩壊するのです。
同様に、自分にもぶつかると崩壊します。

そんなぶつかる行為を敢えてしています。
これは本来、しなくてもいい事ですし、一般的には自己解決して進んで行く話です。
しかし、ぶつかり始めたせいで、この映画内の監督は、積み重なった様々な物が別の感情や別の形を成していきます。

一見、よくいる20前後の女の子にも見えるのです。
でもこの監督は違います。
一般的な女子が、自己で解決すべき感情を、あまりにも生きる事に素直で、真面目過ぎるため、爆発させてその先を求める。
ここまでは割といます。
爆発のさせ方が様々ですが、私は爆発させて先を見たり、先に行った方を何人も見ています。
でもこの監督は違います。
爆発を作品と出来るところがぶっ飛んでます。
更に言えば、7年前の作品、10年以上前のこの作品をまたリバイバル上映出来るところ。
これがこの監督が他と違うところです。

本当にお世辞抜きで、真っ直ぐに、この人は凄いわ…と思いました。

あと…
インタビュー形式でさまざまな人が出てくる後半は、また別の楽しみ方があります。
人それぞれ考えることがあり、それをどれだけ自分で解決、処理をしていくか。
その部分を見るだけでもめちゃくちゃ面白いです。

DVDは作る予定は無いし、今後の上映が無くなる可能性も0ではないと思うと、この映画を本当は他の人にも勧めたいけど、出来ない点が残念です…。
小一郎

小一郎の感想・評価

4.6
劇薬。好悪は大きく分かれ、嫌悪する人の方が多いかもしれず、その理由も大体想像できる。しかし問題は本人にとってどうかであるし、この映画が効く人、心の支えになる人は間違いなくいる。

『ゆきゆきて、神軍』の原一男総指揮のもと、小野さやか監督が日本映画学校の卒業制作で手がけたドキュメンタリー。小野監督は5歳と10歳の時、心に大きな傷を追う。その傷を隠して家族の中でいい子を演じてきたけれど、耐えられなくなり、死にたいと思うようになる。

自分を押し殺し、家族に縛られ、犠牲になってきたという思い。これから生きていくためには家族を壊すしかない。小野監督は「撮るか死ぬかの覚悟で撮った」と話しているけれど嘘ではなく、大げさでもない。

こんな凄いドキュメンタリー良く撮った、ということもさることながら、被写体の家族、「幸福会ヤマギシ会」(農業・牧畜業を基盤とした理想社会を目指すコミューン団体)が映画の公開を良く許したなあと思う。特に長兄。ひょっとすると黙って公開したのかと思ったくらい。

そのことについて、監督は次のように語っている。
(http://eiganomori.net/article/150305842.html)

<姉が一番反対しましたね。やはり長兄のシーンは外せ、と。でも、そこをカットしたら意味がないですからね。根気よく説得して、最後は「四国では上映しない」という条件で、了承してもらいました。長兄にも何回も会って、何回も嘆願して、許可を取りました。最終的には「お前の好きなようにやれ」と言われました。(後略)>

<結果的には、(完成から公開まで)5年おいてよかったかなと思っています。家族一人ひとりが内省するための時間が必要だった。勢いに任せて公開していたら、たぶん、私はすごい傷だらけになって、そのままどこかに逃亡してしまっていたと思います(笑)。>

トラウマを「無意識」に押し込めようとしても、何からかの形で表に現れ、精神を攻撃してくる。だから目をそらさず、向き合って克服することが大切だと、理屈ではわかったつもりになって言うのは簡単だけれど、実行するとなると、これほどまでとは思わなかった。

日本国内で撮影した映画で、掛け値なしに命がけで撮ったと思える作品は初めて見たかもしれない。

小野監督の新作『恋とボルバキア』公開記念で、ポレポレ東中野で7年ぶりにリバイバル上映。1月19日まで。こりゃ新作も見ないといけなくなってしまった。

●物語(50%×4.5):2.25
・粗削りだけど、引き付けて離さない。自我を再構築するとは、こういうことなのだろうけれど凄すぎる。映画を撮るという目的があったからできたのかもしれない。

●配役、演出(30%×5.0):1.50
・圧倒された。監督もさることながら、家族を称えたい。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・いい感じ撮れているのが凄い。
KaiSuzuki

KaiSuzukiの感想・評価

5.0
・「ゆきゆきて、神軍」の女版がピッタリ。極私的エロスもちょっと入ってるかな
・もう原一男のそのもの
・こんなに錯乱してセルフドキュメンタリー整理できんのかよ
・原一男の言いなりか天才かどっちか
・主題二つがクラッチしてないのが気になるところ
・撮影が終始研ぎ澄まされていて、インサートもワークもコメント抑えるのも何から何まで文句なしというか秀逸。
・こんな素晴らしいカメラマンが当時学生だったなんてマジ鳥肌もの。
・超打ちのめされた
・僕は前半40分でよかった。
小野さんが自己存在をかけて闘って生みだした作品のレビューなんて付けられないなぁと思ったけれど、家族の悩み、性の悩み、トラウマ、愛着障害などどの人も持っている心の傷に、小野さんのもがきながら進もうとする姿はすっと染みていくだろうなって思った。

いろんな人に見て欲しい。傷から逃げるのではなくそれを悲しみ尽くす、浸り尽くす、向き合い尽くす、そして闘い尽くすっていうのが自分と似ていて、なんか元気が出た。
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