J四郎

インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実のJ四郎のレビュー・感想・評価

4.2
まず、これはドキュメンタリー映画です。しかも扱っている内容はリーマン・ショックを始め世界金融危機の実態について語っている内容。
興味の無い方には面白くない題材かもしれない。
この映画のナレーターはマット・デイモンが担当している。

数年前に世界を震撼させた金融危機。それが何故起こったのか?そして何が原因で問題だったのかを分かりやすく解説してくれる。
専門家や当事者のインタビューを交えて語られるが、不都合な立場の人間は取材拒否をする。もうこの時点で怪しいと言われても仕方がない。

この下地はなんと80年代のレーガン政権から積み上げられて来たのだから驚きだ。金融業界は活発なロビー活動で共和も民主も取り込んでゆき、政治にも影響力を持ってしまう。
その中で規制緩和を推奨し、次々と新しい金融商品(と聞けば響きがいいが中身はかなり怪しいシロモノ)を生み出していく。
この中でもCDO、CDSという商品。
これら危険な商品に格付け会社も抱き込み、AAA評価をつけて価値を上げていく。
あの金融危機は金融業界どころか、政治も格付け会社もグルになったズブズブの世界だ。ある程度知っていたがここまでヒデェとは。

そして、当時の金融業の人間たちの豪遊っぷりの凄さ。クスリ、ストリップ、買春に狂ってるって本当やったんかい!と分かった。
そう「ウルフ・オブ・ウォールストリート」の世界は決して絵空事ではなかったのだ!

しかし金融危機のあとでも彼らは何ら裁かれる事もなかった。
これは「マネーショート」で語られていたようにだ。
さらにその当事者はまたぞろオバマ政権に返り咲いたりしている。金融業界はロビイストを増やして今でも改革を阻止し続けているのだ。
その影で貧しい人々がやはり最後の貧乏くじを引いてしまう現実。
劇中で起きたのは銀行強盗だと訴えかける。

これは映画を武器にして責任逃れをしたヤツらを追及しているような内容だ。「相手は強敵だ。だが、戦う価値はある」と締めくくる。

個人的にはこれは決して過去の出来事ではないと思う。なぜなら金融取引を長いことしていると、歴史は繰り返すのが分かって来た。これもそうだが自分の頭で考えて勉強することこそが、ああいう連中から騙されないようにする自己防衛手段だと思っております。
J四郎

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