LalaーMukuーMerry

インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.3
リーマンショックは何故起こったのか、ショックの起こる20年以上も前から解き明かされる。誰が責任を取るべきなのか、そして実際どんな対応がとられたのか? 100人近い関係者へのインタビューを通して浮かび上がらせる、とても優れたドキュメンタリー。やっと見ました、もっと早く見ておくべきだった。
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「マネー・ショート 華麗なる大逆転」と一緒に見ると良いでしょう。あっちは銀行、ウォールストリートの人が中心だったけれど、本作は投資銀行だけでなく、格付け会社、ヘッジファンドのトップ、経済学者、有名大学、FRB(全米準備制度理事会)、SEC(証券取引委員会)、政権中枢(財務長官)、ロビイスト等々、範囲が広く、ウォール街寄りの人、反ウォール街の人々から、ポイントをついたコメントを引き出している。取材地域もアメリカだけでなく、アイスランド、ヨーロッパ、中国、シンガポールまで含んでいる。
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アメリカはリーマンショック後、ブッシュからオバマに政権が変わり、Change と言っていたにもかかわらず、実は何も本気の対応をせず、責任をとったウォール街のトップは一人もいなかったという事実は重い。権力の中枢や周辺をウォール街の人脈と金の力が完全に押さえていてメスが入れられないのだ。この辺りは「マイケルムーアの世界戦略のススメ」のアイスランドで描かれていたショック後の対応とは対照的。(電力会社に政・財・官・学・マスコミが牛耳られていて、東日本大震災の後も、原子力と化石エネルギーから再生可能エネルギーへのシフトを進めることができない日本と似ている気がする)
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アメリカ経済の中心と言ってよい部分にこんなに根深い闇が残っているようでは、アメリカの先行きが心配になる。本作品から7年、何かアメリカは変わったのだろうか? 汚職追放に力を入れ経済大国化してきた中国に対して(独裁国家というマイナスポイントがあっても)、これでは強く出ることが難しくなるだろう。大丈夫かアメリカ?