おやすみ

フルメタル・ジャケットのおやすみのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
4.4
鬼才キューブリック。この作品でもひっちゃかめっちゃか頭の可笑しさを露呈しているのかと思いきや精密なストーリー構成とキューブリックらしからぬカメラワークと演出もありやっぱり変態なんだなと良い溜息をついてしまった。あと音楽挿入のタイミングが絶妙。

前半のハートマン劇場は拍手喝采。出るわ出るわ下劣な言葉と体罰。もう余りにも罵倒のボキャブラリーが豊富な事とワードセンスが逸材な事に私の中で笑いすら呼び起こしていたね。さすが映画史最凶キャラクター。愛のない軍曹で何よりです。

全然関係ないし意図は無いと思うけど、皆帽子に言葉や絵を書いてるの、何でだか分からないけどそういう細かいところで悪魔にも見えるただの人間なんだなって思った。パラララ、タタタタ、銃声が嘘みたいに聞こえるのに。

ほほえみデブは狂っていた?いや、狂気に蝕まれ耐え切れなかった普通の少年でしょう。ユングを愛読書としていたジョーカーは勿論、あの訓練を耐え抜きベトナム戦争で銃弾をぶちまけていた兵士たちこそ狂っているのではありませんか。狂気とは自分のものさしで図ることのできない代物です。キューブリックは主観がものをいう狂気を描くのが本当にうまい。そしてそれをごく自然かつ不明瞭に魅せてくれる。

ローリングストーンもミッキーマウスも皮肉だらけのラストですが、戦争とは?という現実を最初から最後まで116分という短い時間で世に叩きつけた秀作。戦争映画の中でも名画として上げる作品がフルメタルジャケットです。