戦争や軍隊の姿を通して人が壊れていく様を狂気と共に描くベトナム戦争映画。
海兵隊に入隊した青年たちはハートマン教官という鬼軍曹により心身共に痛めつけられ、ただの若い男たちは殺しを躊躇わない兵器に仕立て上げられていく。
その先の戦場であるベトナムは地獄であった。戦闘や殺しを楽しむ者や、民間人すらも虐殺する者、自慰行為に依存する者、敵の死体を囲み笑う者、初めて直面する敵の死に沸き立つ者。
軍隊における報道を職務とし直接的な戦闘に関与していなかった青年の視点から戦場の狂気が写し出され、彼も遂には飲み込まれていく。
冒頭の教官による統制は異様な空間を形作っていて、戦場に送り込まれる前に青年たちは一度壊されてしまう。これは鬼軍曹もまた軍や戦場で人間性を破壊され、それをこの場で再生産しているように感じます。
優秀ながら独特な価値観や哲学を持ち、上官にすら食ってかかる青年ジョーカーはあの後どうなってしまったのか。その他大勢の壊れた兵と同様に、レナードのようになってしまうのか。
戦場が兵に与える影響がどのようなものなのか。この映画特有の誇張なのかもしれないし、現実はもっと恐ろしいのかもしれない。見終わった後に考えに取りつかれる一本です。