オザキ

フルメタル・ジャケットのオザキのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
3.6
この映画が描くのは、激しい戦禍ではなく、小隊の仲間との絆でもなく、一言で言うなら「ベトナム戦争の地獄」といった感じの映画です。ただし、この映画は観る人を選びます。「感動」を求めている人は別の映画を見た方が良いかも知れません…。

<概要>
この映画は前半の「訓練所」編と後半の「ベトナム戦争」編に分かれていますが、2編にさほど繋がりが見えません😓共通点を強いて言うなら、「軍隊での生活が長くなると性格や倫理観が狂う」という事でしょうか?(ギリ)共感できる登場人物が主人公くらいで、いわゆるクソヤローばかりが登場します。


同じくベトナム戦争をテーマにした映画に「プラトーン」があります。大きな違いは、「プラトーン」には悪事に手を染める「悪」がいる一方、主人公やエリアスといった「善」が確かに存在するという描き方でしょう。明らかな対比によって、観客は「ベトナム戦争ではこんな悲惨な事がおきているのか!」と強烈に感じ、映画の伝えるメッセージを確かに受け取れます。


一方「フルメタル・ジャケット」はというと、悪事が罰される事はまずありません。農民を無差別に殺したり、兵士たちが淫売に手を染めたり、敵の少女を殺して喜んでいたり…。地獄絵図の様な出来事も日常茶飯の様に消化出来てしまう兵士達。誰も怒らないどころかジョークで笑いが起こる。戦場における「善」と「悪」など微塵も感じ取れません。全てがグレーゾーンで処理される。きっとこの兵士達の「日常生活」こそ監督が描きたかったものなのだと思います。ただただ不愉快な日常が流れるだけで、感動とは無縁の世界観です。きっとここは、この映画を受け入れられるかどうかのポイントでしょう。


見た後に残るのは個人的に「不快感」が大きかったです。ただ、他の戦争映画でここまで思い切りよく腐りきった世界を表現している物はそうそう見ません。オススメはしませんが、私は嫌いではありません😅
オザキ

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