もりりた

フルメタル・ジャケットのもりりたのレビュー・感想・評価

フルメタル・ジャケット(1987年製作の映画)
4.0
海兵隊訓練キャンプで厳しい上官
ハートマンから指導を受ける青年達
大柄なレナードは要領が悪く
特に厳しい指導を受けていた
繰り返すミスにより連帯責任を問われ
訓練生の間で孤立するレナードは
自分の世界に入り込むようになる
その後彼は射撃で才能を発揮
上官に認められ無事学校を卒業
しかしその夜 同僚ジョーカーがトイレで
ただならない様相のレナードを発見
そして彼は常軌を逸した行動を取る


ノンストップな上官の説教
次々飛び出すパワーワードに引き込まれ
ランニングするときの歌まで笑える

ゆるい顔のレナードもおかしくて
ジョーカーに指導される場面は
温かさまで感じたが…顛末は容赦ない💦

明るい音楽で始まるベトナム編も同様
カウボーイとの再会に盛り上がるが
前線の悲惨さはジョーカーも変えてしまう

独特な緩急で話の先が見えないが
徐々に雰囲気が変わり気付けば目が離せない
緊張感の作り方が巧みで引き込まれる


訓練学校の息苦しく閉じた世界
戦争渦中の不気味にだだっ広い街
異なる状況だが徹底した作り込みで
本編中で違和感なく両立させている🤔

テト攻勢で敵を迎え撃つシーンや
荒廃したフエ市街をバックに
カウボーイ達と前線に向けて歩くシーン
乾いた色合いのセットが臨場感あり
30年以上前の作品という古さを感じない

ハートマンの激昂や狂ったレナード
狙撃少女の顔をアップし異常性を伝えたり
ドーナツをかじるレナードの左右で
腕立て伏せする訓練生達 構図も工夫がある


極限の状況が理性の殻を破っていき
潜在していた狂気が剥き出しになる
その過程を目の当たりにする映画

上官のしごきや同僚からのいじめ
そのゆるい表情からは見え難かったが
レナードは静かにバケモノに変わっていた

小銃でただ一人米軍を迎え撃つ少女
その異常に正確な射撃能力も命の危機や
抱える怒りが生み出したと感じた🔥

ラストシーン 多数の犠牲を払った後の
ミッキーマウスを歌いながらの行進
不自然な明るさ 一皮剥けた様が見えた


キャンプ時代とその後のベトナム戦争
その過程で感じるのは
密かに蝕まれてモンスターに変わる恐怖

レナードを思わせる狙撃というキーワード
今にも倒れそうな少女狙撃手に感じたのは
何をしでかすかわからないという過去の経験
前半との繋がりを感じさせ印象的だった

真面目にキャンプをこなすだけでなく
戦地でもピースマークを携え戦争に対して
客観的な視点を持っていたジョーカー
そんな彼が自ら人を裁くまでに変貌
変化の振り幅が恐ろしかった


救いのないストーリーの顛末
見る人を選ぶが個人的には好きな感じ!
もりりた

もりりた