映画ケーン

SR サイタマノラッパーの映画ケーンのレビュー・感想・評価

SR サイタマノラッパー(2008年製作の映画)
5.0


今作の3作目を除いて、この映画ほど涙が出た映画は無い。



埼玉県。ボンクラで多分童貞の駒木根隆介演じるラッパーを目指すIKKU。他のボンクラ2人のTOMとMIGHTYと「SHO-GUNG」というチームを作りラップ活動を開始する。
車、金、女、才能が無い、と取り柄が全く無い。努力するって事もない。とにかく全てにおいて何もない。それでもヒップホップが好きでヒップホップやって行きたい!と頑張ろうとする。

しかし、「大学を出ていない」「ヒップホップなんて不良の文化をやって…」と非難されたり、夢を追ってばかりに「生活」という現実までが彼らを押し潰していく。
夢を追う人は側から見たら「何してんの?w」って嘲笑される対象で、更にはお金も稼げない。彼らはその現実に打ち当たり、全てを奪われて行く(元から何も無いのに更に無くなっていく)。それで、最後の最後、主人公IKKUに残ったものがヒップホップだった。

ヒップホップって、芸術性はあるっちゃあるんだけど、それより「俺のこの心の叫びを聞け!!」みたいな「ソウル」を打つける文化なんだ。ロックの派生って事も考えると良く分かる。
で、この映画にもそのソウルがあるんだよね。確かに技術的な面とか、もっとこうしたら、みたいな部分はあるんだけど、「それより俺の話を聞け!」みたいなのが伝わって、更に最終的には「ソウル」のみが残って、それが観客にまで届く、って作り。これは泣く。「腹の底から笑う」って表現あるけど、腹の底から泣く。

映画でボンクラが出ると、大抵は何か取り柄があったり、(最悪なのは)実は天才だったり、心優しい奴だったり、努力してのし上がって行ったり、とか良い所があるもんやんだけど、そんなものは全く持ってないんだよね。

んで、またラストの切れが最高で上手いんだ。
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