みおこし

カラミティ・ジェーンのみおこしのレビュー・感想・評価

カラミティ・ジェーン(1953年製作の映画)
4.1
大当たりー!!『掠奪された七人の花嫁』も今年トップ3には入るレベルの名作なんですが、それを越えてきました。仕事終わりはお気楽なミュージカルを観たいなと思って、最近古いのばっかり借りてるんですが本当に宇宙一お気楽な映画だった(笑)。

女性でありながら早撃ちの名手だった西部開拓時代実在の人物カラミティ・ジェーン。超おてんばな彼女と、それを取り巻く人々の心温まる交流、その恋を描いた作品。とにかくテンポが良い。そして展開がひたすら明るくて気持ちいい...!サントラも個人的にはバッチリハマりました。

まず主役のドリス・デイ、この時代にジェーンを演じられる人が他にいたかと言ったら絶対にいないと思います。しっとりしたジャズナンバーの歌い手のイメージが強かった分、ここまで体当たりで女を捨てた演技のできる女優さんだとはつゆ知らず。『知りすぎた男』の彼女は正直他の女優さんでも演技面では成り立ったと思うけど、本作は間違いなく代わりがいない...!!
馬車の上から下に乗り移ったり、バーカウンターの上を軽やかに駆け回ったり、怒るとすぐ銃をぶっ放したり、「この屁こきスカンク!」とむさ苦しい男どもを罵ったり。常に声色も男っぽくしてて、顔もススだらけなんだけど全然いやらしくないし、むしろ愛嬌があって魅力的。豪快な笑い方も本当によかった!
それを支える親友で荒くれ者のビル・ヒコック役はハワード・キール!!あ、この前『掠奪された〜』で超お気楽なバリトンボイスの長男演じてた人だ!(笑)これまたタフだし頼り甲斐あるんだけどユーモアもきちんとあって、ジェーンとじゃれ合いまくる。お互い親友と認め合ってて、どっちも早撃ちの名手。ビルがジェーンを見守る眼差しが優しい。
親友から恋人になる系のお話が大好きなので、二人のやりとりに常にニコニコ。特にスー族の女の下りは爆笑だった(笑)。

とにかく女らしさのかけらもないし、荒っぽくて感情的なジェーン。飾りたがらないところとか、本当は一番女子として見て欲しいところとか、好きな人に構ってほしいところとか。なんだ、この少女漫画的なノリは。やたらと共感できました。冒頭、想いを寄せている少尉を助けに行くシーンで馬にわざと二人乗りして「気分でね」って少尉に抱きつくシーンとか完全に女の子(笑)。すぐ嫉妬しちゃう感じも分かる。

最後のほうはお気楽ミュージカルらしく、展開が早すぎたけど、それを忘れるくらい『シークレット・ラブ』が名曲だったから良し。ジェーンにとっては本当に本当に秘めた想いだったろうから、それを思うと胸熱。ケイティーを呼び戻しに行くときの、すれ違いざまのキスシーンはキュンとしすぎて泣きました(笑)。歌ってる時の表情がこの時は完全に女性になってて、ドリス・デイ天才だと思いました。

強いてイマイチなところを挙げるなら、実話との乖離がめちゃくちゃ激しいところ(笑)。実際のカラミティ・ジェーンがどんな人だったかはあとで調べるより、前に調べた方がギャップの大きさは抑えられるかな、と思います。あと、インディアンを悪党として描いている点は、当時アメリカではまだ誤ったステレオタイプが根付いてたのかーとちょびっと悲しくなった。
でもそれ以外はセットや衣装、脇役の演技も全て素敵で、当時のお客さんはさぞ目を輝かせながら本作を観たんだろうなあと。私もなぜだかすごく元気をもらえた映画でした。
めっちゃお勧めします!ぜひ冬休みに観てみてください!
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