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日本一のホラ吹き男のtakのレビュー・感想・評価

日本一のホラ吹き男(1964年製作の映画)
3.4
オリンピック期待の星だった三段跳び選手初等(はじめひとし)は、足の怪我で選手生命を絶たれてしまう。そんなとき、たまたま見つけた古文書で、大ホラ吹きの先祖が大成功したことを知る。等は一流企業の増益電機に入社して大出世することをめざす!というお話。

大ホラ吹きだけでなく、その為には努力を惜しまないのがこの主人公のすごさ。大きなことばっかり言うヤツはよくいるけれど、この映画の主人公は有言実行。そしてその為にはどんな努力も惜しまないのがすごい。そして脚本が素晴らしい。お気楽なコメディなのに、わずか数ヶ月で課長、部長と出世する理由がきちんとしていて、荒唐無稽なのに変な説得力がある。労働組合を除名されるが、クビにできないので人事が役職に就けるとか、入札情報をめぐる駆け引きとか。

突然ミュージカルになっちゃうのも楽しい。劇中八木節の替え歌を歌う場面があるが、これは宇崎竜童が竜童組で演奏していた「八木節イントロデュース」の元ネタ?。いや、きっとそうだろう。ちょっとひっかかるのは、等(ひとし)を嫌っていた浜美枝が出世した途端にコロッと寝返ってしまうこと。何とも都合が良すぎだけど、まぁ細かいことは気にしない。個性的な脇役達も嬉しい。由利徹扮する守衛さん!たまらなく好き!。

今のニッポンは元気を失っている。ニュースも日々の話題も暗いものばかり。仕事をめぐる状況も待遇や給与面でも格差は進むばかり。高度成長期に製作されたこの映画は、働いたことが報われるという前提で成り立っている。だけど報われないのが現代サラリーマン。でもね、せめてこの映画からパワーと明るさをもらおうじゃない!。今のニッポンに欠けているのは、逆境におかれても「なんかワクワクしてきたぞ!」という植木等の前向きさなんだ。
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