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バニー・レークは行方不明のRenのレビュー・感想・評価

バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)
3.5
トラウマ映画だのどんでん返しだの言われているけど実のところ今作の脚本は別に好きではなくて、演出の妙で楽しめた作品だった、が結論。そりゃ面白いには面白いけど、色々無駄が多いかなーとも感じた。

行方不明の娘は実在するのか、しないのか、「信頼できない語り手」ものとして幕を開ける。居ない者を追い続けるようで(精神状態に問題あり?)見ていて気の毒になるアンと、アンを異常に心配する(ボディタッチの近さが見ていてウッとなる)実兄のスティーブン。ヤバそうな匂い100%で、サスペンスとしての雰囲気作りは良い。実体のないバニー・レークを捜す彼らと同じく、観客も掴みどころのないストーリーを追体験する感覚。

元家、保育園、人形修理店、病院、あらゆるロケーションに「無意味なほど間取りが複雑」「階段あり」という共通点があり、捜す/捜される、追う/追われる関係が全てで異なっているのも見せ方として面白い。107分、常に誰かが誰かを捜している。

今作も「血縁」の物語。血縁で繋がれた以上、絶対にその運命から逃げ切ることはできないけど、そこから逃げなければいけないこともある。後半にそのことを文字通りそのまま見せる演出が為されていて、怖い気持ち悪いと思いながら楽しんだ。

ただやっぱり、どんでん返しのためのどんでん返し。ある結末がまずあって、そこに向かって登場人物がドミノ倒しのようにパタパタ動いていくだけの作品は、一定の面白さはあるにしても絶賛しづらいというのがある。
色々連想する映画はあるのだけど、それを書くと双方にとってのネタバレになるのでここでは自重。個人的に、乙一氏の『優子』(『夏と花火と私の死体』収録)がパッと浮かんだ。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》









中盤をあまりに「バニーは実在しない」テイで進めていくので、バニー実在オチには全く驚くことができず。というか戸籍とか確認すればすぐ分かるんじゃないの?ラストのツイストでびっくりさせたい以上の意図が感じられないので、やはりそこ勝負の脚本なのだなぁと思ってしまう。園長と大家さんが本当にただの捨て駒で終わったのもいただけない。

スティーブンの必死さは、「実在しない娘を捜す妹を庇う兄(ラストまでの観客の解釈)」とも「自らの犯罪を隠そうと奔走する姿」ともとれる。序盤は彼が真犯人との確信が持てなかったが、証拠品であるお菓子の箱を後部座席に雑に投げ入れた瞬間に、どちらにせよ妹への真の意味での愛は無いなと。犯人かその共犯であるのは確定。意外とその辺りはフェア?

夜中に庭で遊ぶ3人の異様さは凄い。一番純粋に遊びを楽しんでいるのが、最年長のスティーブン。彼の歪んだ愛から逃れ娘との幸せを死守するために、「子ども返り」という彼の病を利用する攻防のスリリングさと心苦しさは◎。
人形を燃やすスティーブンの狂気顔と、ビニールハウス越しの彼の姿がお気に入り。たまにキリアン・マーフィっぽく見える時があったのは気のせい?
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