松浦義英

バニー・レークは行方不明の松浦義英のレビュー・感想・評価

バニー・レークは行方不明(1965年製作の映画)
3.5
町山智浩さんがオススメしていたので観賞。
『何がジェーンに起ったか?』もそうだけど、この時代は最後の最後まで見ないと結末がわからないっていう映画が多いよね。素晴らしいよね。

まずOPから驚いたよね。
「画面比がおかしい、パラマウント切れてるやんけ」
「まあ昔の映画だから保存状態が悪かったのかなあ?…でもみれるだけいいよな」って思ってたらOP終わった途端に画面比が通常に戻る。

上映当時はこれが当然だったのかもしれないけど、何年も経ってからこういう手法に触れれる凄さ。
今となってはDVDで画面いっぱいの映像が当たり前だからこそすごく新鮮に見える。
しかも白黒映画で。
これこそムービーマジックだよね。

開始当初から始まる円輪。
保育園に預けたはずの娘を迎えに行ってみると「預かっていない」と。
弟と一緒に娘を探してみるけど、いない。
弟はお姉さんが困ってるからと積極的に探す。
警察に助け求めたり、アパートの大家さんがねちっこすぎるエロオヤジだったり(役者さんはゲイとのことで、演技力凄い!)、
保育園の園長さんにアドバイス貰ったりして。

母親が「娘探して!」ばかりいうのに娘が使ってた物とかが一切出てこない事に不信感を抱いて『こいつ精神病んでるんじゃ…?』と思い始める警察と見ている自分。
イマジナリーフレンドの話なんかも出てきて余計にそう思うんだ。
何故か保育園長が「弟は何かおかしい」なんていうけど、いや母親のほうがおかしいんじゃないかと。

バーのシーンでテレビのチャンネルが切り替わるタイミングに驚いた。
あれで『今自分が見ている世界は母親の視点の妄想なんじゃないか…』と思わせるという。
ここらへんの切れ味が昔の映画は鋭い。

ここから映画の空気がガラッと変わる。
母親が精神病院に収監される。
そして『チェンジリング』みたいな拷問が始まるのかなあと思ったらまさかの脱走劇(笑)カメラワークがプロのそれだった。

そして保育園に戻ってくる母。
(冒頭は朝の保育園なのにここでは夜の保育園という対比)
「姉は精神病院に入院中」と思ってる弟が保育園の中でウロウロ。
なんと娘が、バニーがそこにはいて。
殺そうとして、埋めるための穴を庭に掘る弟。
まさかの誘拐犯は弟だった、と。
…弟はシスコンが過ぎて独占出来なくなるからバニーが邪魔になって消したと。恐ろしい。

姉が弟の前に出て説得するもどうも聞く耳を持たない。
昔のように遊びながら弟から徐々に娘を離そうと考える母親。
弟は瞬間的に退行して幼児化。
弟と姉とどこかの子供と(弟にはどう見えてたのか…?)かくれんぼを始める。
でもその作戦もうまくいくはずもなく…ガラス越しに叩く弟の目の座り具合が凄い。
それから命乞いをする姉と殺すことに一直線な弟。
…さあ殺されるぞ!ってなった瞬間に姉の性格が急変。
ブランゴに乗って「さあ押しなさい!もっとよ!押さないともう遊んであげないわよ!」という姉。

弟に加えて姉も狂ったか…。
と思っていると姉の「押せ!押せ!」という狂気に満ちた大きな叫びを聞いた駆けつけた警察官がバニーを見つけて弟を逮捕。

行き過ぎた愛は怖いっていう映画。
ほどほどにしなきゃね。
松浦義英

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