けんぼー

仁義なき戦い 広島死闘篇のけんぼーのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.0
2020年鑑賞193本目。
伝説となった前作からの絶妙な方向転換がすごい。より熱くなれる男のドラマ。

深作欣二の迫力あるカメラワーク、豪華俳優陣のエネルギッシュな演技、そして複雑に入り組んだ「広島事件」の呉での抗争を見事にまとめ、物語としてとても面白く成立させた笠原和夫の脚本力が冴えわたった前作「仁義なき戦い」。その撮影中からすでに第2作の制作が決まっていたという。

ただ、原作の内容が追い付いていなかったため、脚本の笠原は、1作目とほぼ同時期の時間設定にし、実在する伝説のヤクザ「山上光浩」と「村上正明」を主軸にした物語にした。
前作の群像劇的な作り方とは方向性を変えてきたわけだが、それでもちゃんと面白い。むしろ「熱さ」という意味ではオリジナル5部作の中でも一番だと思う。

シリーズの主人公は菅原文太演じる広能昌三なのだが、本作は北大路欣也演じる山中正治(山上光治がモデル)と千葉真一演じる大友勝利(村上正明がモデル)という対照的な二人のヤクザを中心に物語が進む。広能ももちろん登場するのだが、今回はサポート役的な立ち位置。

前作同様、ヤクザ組織同士の抗争の中を生きる若者を描いているが、二人の主人公に焦点が絞られていることで、よりキャラクターに感情移入しやすくなっている。
不器用で、抗争に振り回されながらも愛に生きる山中と、自らの野望のために手段を選ばず突き進む大友。
短い人生を文字通り燃え尽きた二人の姿に、男なら熱くならずにはいられない作品だった。

2020/11/9観賞