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仁義なき戦い 広島死闘篇のギズモXのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.7
「山中正治は広島ヤクザの典型として、現在もその名が語り継がれている」
「だが、今その墓を訪れる者は一人もない」

『この世界の片隅に』っていうアニメあるじゃないですか。
あれ見てるとね、僕すっごくウズウズするんすよ。
まだかまだか、『仁義なき戦い』はまだかみたいな感じで。
公開された当時「感動した」「泣ける」とかいう感想をよく耳にしたんですけど、
いやその直後に呉も広島も鉛玉飛び交う戦場と化すんだけど、感動してる場合じゃなくね?泣いてる場合じゃなくね?っていつも思っちゃって、なんかあの人間讃歌的な話に凄く違和感を感じちゃって、『この世界の片隅に』という作品自体が山守と重なって見えちゃうようになったんですよね。
この文章を読んで気分を害された方、誠に申し訳ございません。

実際に起きたヤクザの一大抗争を基とするヤクザ映画の代表作『仁義なき戦い』シリーズの第二弾。
舞台を呉の山守組から広島の村岡組にへと移したシリーズ番外編でありながらも、戦後になろうが変わりはしない人間の本質を描ききった大傑作である。

もうね、見終わった後はなんとも言えなくなる。

暴力が新たな暴力を生む暴力に満ちた社会構造と、そんな世界でしか生きられない者達。
若者が権力者にこき使われるだけ使われて、最後には捨てられてしまう、この現代社会の縮図とも云うべき不条理に満ちた結末。
ホントにやりきれない。

まあ、山中も大友も好きにはなれないし、暴力はいけないことは嫌というほど身にしみているんだけど、
この『仁義なき戦い』を見てるとね、だんだんと
「殺さんかい!おおぅ!」
「わしを生かしといたら、おどれら後で一匹ずつブチ殺してくれちゃるんぞ!」
とそんな気持ちがグツグツと湧いてくるんすよ。

ヤクザ映画の中で僕が特に好きな作品が、ラストで一矢報いた『沖縄やくざ戦争』と『柳生一族の陰謀』なのはそれが理由なのかもしれない。
いや『柳生一族の陰謀』は時代劇じゃないかと思うだろうが、話の内容がヤクザ映画そのものなんだからしょうがないじゃない。
僕は度胸も仁義も持ち合わせてはいない人間だが、この映画のような暴力の世界に生きる人達を描いた作品を観ると(何も考えない人間のままで死にたくねえ)とそんなことを思わされるのだ。

一番心に残ってる場面は、山中が滞在先の組と対立してる組長を射殺する場面。
深作作品特有の狂乱とは正反対の呆気ない静寂が、あの瞬間から山中がヤクザの特攻隊になったのを表している。
大友組による村岡組襲撃のてんやわんやも大好きだ。

https://youtu.be/F3_7wpLZ_dc

【おまけ】

https://youtu.be/5HNSVksntOs

いい動画なので再転載。
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