円柱野郎

仁義なき戦い 広島死闘篇の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

戦後の広島で起きたヤクザの広島抗争の一端を、実在した二人のヤクザをモデルにについて描いた「仁義なき戦い」シリーズの第2弾。

1作目からわずか3か月後に公開されたこの2作目は、1作目の呉での抗争とわずかに前後した時期に広島で起きた抗争事件をモデルにしている。
どちらも広義には第一次広島抗争になるという事らしいが、事件の中心は異なるので必然的にストーリー上の主要キャラも異なってくる。
ということで、続編ではあるものの前作の広能(菅原文太)から主人公は村岡組の山中(北大路欣也)と大友組の大友勝利(千葉真一)にバトンタッチ。
一応、広能も登場するけども、本作では脇役的な立ち位置だね。

前作の群像劇的な組織内対立のギラギラ感と比べると、本作は山中の“ある女に惚れたヤクザ者”の顛末を中心に描いた悲恋のドラマの様な話になっているのでちょっと印象が違う。
山中は村岡組の組長の器の大きさに当初恩義を感じていた部分もあるのだろうが、物語の最後には誰も信じられなくなって自殺した。
終盤の逃亡劇は非常に画質が荒いが、ライティングはあまり使わずに高感度フィルムで撮った様な粗さが山中の心情とリンクするような印象も与えるので効果としては良いな。
単作として考えれば“ヤクザという生き方に翻弄された若者の物語”という部分が強調されてはいる感じは悪くはないとは思う。
でも前作と比較してしまうとなあ…、方向性が違うとはいえそのあたりの物語のオーソドックスさに少し物足りなさを感じる部分もあるか。

一方で勢力を拡大する村岡組に反発した大友連合会会長の長男・大友勝利は、その強烈なキャラクターで村岡組vs大友組が対立する展開を牽引する。
大友勝利は絵に描いた様なチンピラヤクザだけど、千葉真一が演じるその勝利のインパクトたるや凄まじいw
彼のビジュアルもさることながら、早口のセリフとその内容・行動のどこを切り取ってもヒドイったらない(誉め言葉)。
ある意味で仁義に翻弄されて死んだ山中と違って、この大友は仁義や秩序なんぞどこ吹く風といった感じでぶち壊しまくるわけだが、その極端な行動が警察と暴力団の旧来の関係性さえも揺るがしていくあたりは面白いと思ったね。

それにしても、公営ギャンブル場の警備を公然と暴力団が請け負っているというのが時代だなあ。
「闇市の三国人騒ぎで儂に泣きついたのは誰なら」と広島県警の人間に村岡組長が言っているのも、そういう時代ならではの警察と任侠の関係性に日本の歴史の一端を見た気がするし、そしてそこから今に至る社会の変化を感じる部分ではあったかな。

ということで、本作は広島抗争全体というよりはその中にいた2人のヤクザのドラマが中心なので、本格的な1作目の続きの物語は次回作「代理戦争」へ持ち越しです。
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