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仁義なき戦い 広島死闘篇のKuutaのレビュー・感想・評価

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)
4.2
戦後日本の欺瞞と、戦争の傷というテーマがより強調される作りになっており、物語的にも引き込まれた。

復員兵であり、広島で孤独を味わっていた山中(北大路欽也)と、村岡組組長の姪、靖子(梶芽衣子)が恋に落ちる。村岡組と大友連合会の派手な抗争シーンがあるため、一作目よりも図式化して楽しめるだけでなく、山中と靖子の関係がきっちり描かれているのが良い。

靖子は夫を特攻で亡くしている。山中に体を許したのも、夫を求めていたからのように見える。一作目で山守組長が広能(菅原文太)を戦死した息子同然に扱う展開に重なる。

戦争の傷を埋めようと、欠落した者同士が手を取り合う。だが、村岡組の組長は、靖子と山中の結婚を認めず、山中を利用するだけ利用し、見殺しにしようとする。

そこで靖子は組長に「なんで助けに行ってやらんの!?みんなおじさん達がやらせたことじゃないの!」「あんたらも人殺してきたんじゃろ!」と詰め寄るが、当然無視され、彼女は慟哭する。この梶芽衣子の名演、思わず涙してしまった。

この台詞、間違いなく靖子には夫を失った経験がフラッシュバックしており、同じ悲劇を繰り返さないために、声を上げている。戦時中の日本軍にはできなかった抵抗を、怒りをぶつけている。だが、一度ならず二度までも、身勝手な日本の「組織」によって愛する男が殺される、この絶望感。追い詰められた山中は、戦地の日本兵と同じ方法で自決する。

エピローグの山中の墓は荒れ放題で、「その名は語り継がれている、だがその墓を訪れる者は1人もない」というナレーション。「若者の死を積み重ねて広島ヤクザの抗争は拡大の一途を辿る」という言葉に、原爆ドームの映像が重なる皮肉。一作目のオープニングの対をなす形で映画は終わっていく。85点。
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