EmiDebu

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆくのEmiDebuのレビュー・感想・評価

3.5
「ただ、、、。踊りをやめたら後悔するんじゃねぇかなぁ。俺だったらそんなことはさせねぇ」

16作目の葛飾立志篇では考古学と結婚どちらを取るかという選択を迫られ「考古学を一生続けることになんの疑問も持ってなかったのにいざ結婚ということが起きてみると根本からぐらつくのは、私が女だからかしら」という名言が生まれたが、最終的に礼子が葛飾立志篇で取った選択の真逆を描いたような作品。しかし、境遇や心情はかなり近く、「女は結婚したら人生を諦め、別の幸せを模索しなければいけないのか」という、シリーズで何度も取り扱われる山田洋次の問題敵意を感じられる。

「私から踊りを取ったらなんになるのよ」と言う松竹歌劇団のスター紅奈々子。スターになるまでの努力や下積みは生半可なものじゃない。後を追う新人たちは「才能があれば10年で紅さんみたいになれるかしら」と言うほどだ。好きなものを追い求め、名声までも手にする奈々子はそれでも結婚とキャリアの狭間で思い悩む。
どっちを選んでも後悔はきっと付き纏う。そんなことも奈々子は分かっている。そんな中今作でも名言が登場する。
「どうして私なんかに惚れたんだろ。アイツ。好きだったら、なんでそっとしといてくんないのさ、、、。どうしてこんなに苦しめるのさ、、、。」
人が人を好きになるのは理屈じゃない。しかし、大事なものを得る代わりにもう一つの大事なものを失わなければいけないのなら、そもそもそんな気持ちに気づかなかった方が、出会ってなかった方が良かったと奈々子は嘆くのだ。

ラストシーン近くの奈々子のレビューで感情が溢れ出してしまうところ、そしてあの歌、とても涙が溢れてしまいました。

武田鉄矢って個人的にはあんまり好きじゃなかったんだけど、とあるフォークグループのヴォーカルがこんなコミカルな演技をするんだもの、人気の理由もわかった。冴えないところがまた共感を生むのかもしれない。
寅次郎の未来のとらやビジョンは、反感こそ買ったけどあながちビジネス的には正しい気もする。
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