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刑事マルティン・ベックのBELARUSのレビュー・感想・評価

刑事マルティン・ベック(1976年製作の映画)
4.9
リアリスムという観点からすると、この映画の徹底ぶりはヘロデ王並みの錯乱の域に達している。流血シーンにはすべて屠殺場から仕入れた豚の血が使用され、クライマックスの大捕物では、警察から約50万円で買い取ったヘリを、オーデンプランの中心地に叩き落としている。監督は広告で群衆を呼び寄せ、指示を飛ばし、墜落するヘリの真下に出てカメラを回し、現場を狂乱の縁に叩き込んだ。クライマックスの混沌とした緊迫感は、撮影現場の様相をそのまま映し出していたというわけだ。監督は故意に現場を混乱させるのが好きなタイプだったのである。

刑事同士のユーモラスな掛け合いや、ユニークな人物造形にも見逃せないものがある。頭を狙撃され、タオルを巻いて現れた同僚を「インド人か」と一蹴する間は見事だった。撃たれたことに対して、同情のかけらもないのである。

フルート奏者Björn J:son Lindhの、プログレとジャズ・フュージョンの間を血飛沫上げて疾走する、ヒリヒリとした緊迫感あふれるスコアが、耳に傷痕のように残る。

cf.Björn J:son Lindh 'Lastbrygga' : https://youtu.be/vPmBLEe_a7M
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