みおこし

ミルク・マネーのみおこしのレビュー・感想・評価

ミルク・マネー(1994年製作の映画)
3.7
高校で教師をしている父親トムと二人暮らしの12歳の少年フランクは、思春期真っ盛り。友人たちと集めたなけなしの金を持ってダウンタウンに向かい、街中の娼婦にお金を払って裸を見せてもらおうと画策するが、道中で悪い男に騙されて小遣いをだまし取られそうになってしまう。そんな窮地を救ったのは「V」と名乗る美しい娼婦で、彼女に家まで送ってもらうのだが…。

思春期を迎えた少年とその父親、そしてミステリアスな娼婦という3人が織りなすハートフル・コメディ。青春映画としても楽しめる一本なのですが、なんとこの年のラジー賞脚本賞にノミネートされてしまったそう。個人的にはすごく楽しめたので、何とも残念な限り。
キーパーソンの「V」を演じるのは、メラニー・グリフィス。一見問題を抱えたちょっとスれた感じながら、本当は幸せな結婚を夢見る慈愛に満ちた素敵な女性である「V」を見事に演じていて、その”乙女”っぷりにとても好感が持てました。『サムシング・ワイルド』とか『ワーキング・ガール』とか、80年代~90年代にかけて個性的なヒロイン役を多く務められている女優さんですよね。そんな彼女と思いがけず出会うフランクの父親にはエド・ハリス。悪役が多い役者さんなので、今回の品行方正かつどこまでも真面目な教師役が新鮮!メラニーとの相性もぴったりでした。

フランクがとっさについた嘘がきっかけで、トムは「V」の素性を知らないまま恋に落ち、そしてまた「V」も彼が自分の仕事を理解していると勘違いしてしまう…というまるでアンジャッシュのコントのような展開。なかなか娼婦という仕事は誤解されやすい職業なので、街の人たちからの視線も冷たくなっていくのですが、それでもなお彼女の本質を受け止めようとするトムとフランク親子の思いに涙。そして、ひとりの女性として幸せを見出していく「V」の様子にも涙。

ただ、本作がラジー賞にノミネートされてしまった要因をひとつ挙げるとしたならば、本作で描かれる”母親像”。母親を亡くしているフランク少年にとって、「V」はいつしか理想の母親になっていくのですが、元をたどれば彼女はフランク少年にとって性の対象だったわけで…。そこが一致するような見え方をしてしまっている点に関しては少し残念だった気がしました。とても心温まるストーリーなのは間違いないのですが、この事実を受け止めると確かに「うーん」となってしまうので、正しい描き方がとても難しい題材だなと…。

その点さえ除けば、どこか子供時代の郷愁を誘う90年代らしい笑えて泣ける素敵なコメディなので、ぜひ皆さんもご覧ください!
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