IT坊や

ヴィデオドロームのIT坊やのネタバレレビュー・内容・結末

ヴィデオドローム(1982年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

クローネンバーグ作品。
な、なんだこれ!おもしろ〜!!

クローネンバーグ作品は「ザ・フライ」しか観たことなくて、強烈な魅力を含みつつもトラウマだったので、他作品に手を出せずにいたのですが…。
人間の本能領域を執拗に刺激してくる作風とか、有機性と機械の融合とか、この監督にしか出せない味がてんこ盛りで、いやはや素晴らしい!

最初の方は、割と理性で観れていたんです。
暴力とポルノ、人間の欲望の行く先を見せてくれる話なのかなと思い、どんな結末が待っているのかとワクワクしました。

少し異常なニッキーの自傷癖も、ポルノと同じ文脈だろうと思います。
付け焼き刃レベルの知識ですが、リストカット等の自傷は、脳内の快楽物質を引き起こすから(事故の時にアドレナリン出る時みたいな)、気持ちがスーッとして依存的になりやすいらしいですね。

彼女が乳房に根性焼きするシーンは、「こんな私を受け入れて」というメッセージと、「こんな私を嫌いになって」(どうせそうでしょう?それが分かれば安心するの)といった相反するメッセージを凄く感じて、その色気も相まって何だかクラクラしました。彼女が「心の相談」的な番組をやってるのも、めちゃくちゃ皮肉ですよね。

ビデオドロームってのも、おそらくはドラッグの暗喩なのかなと思います。
あまり詳しくないですが、昔は、ドラッグによる認識の拡張(幻覚)が、人間の進化みたいに肯定的に語られていた文化もあったと聞いたことがありますし、教授も似たような事を言っていたし。
目先の快楽で、人生の苦痛を紛らわせてしまう人間の業を描いていくのかなぁと。

とまぁ、ここまでは冷静に観ていたのですが、話は思わぬ方向へ!
ビデオドロームの洗脳による呪術合戦みたいになっていき、マックスの幻覚も一層飛躍していきます。

博士の言ったように、幻覚が現実に変化して、新人類の如くスーパーパワーまで得ていく!この強襲シーンも興奮しました!

ラストの自殺は、意味は汲み取れませんでしたが、何だか納得感のあるエンディングです。
理性で分析的に観るよりも、感覚的に味わうのが正解のようにも思います。(酒をあおりながら夜中に観たのが凄く良かった。)

ビデオドロームのオカルト性や、お腹に女性器的な穴が開くグロテスクさ、機械との融合。ビジュアル的にもストーリー的にも斜め上に連れて行かれるのですが、この感覚が何だか面白い!
置いてけぼりにされるのではなく、サプライズのように機能していくのは、強烈なストーリーテリングと監督の手腕のお陰でしょうか?
僕は凄く楽しめました!

色々語りましたが、1番のお気に入りは、ニッキーの唇がテレビに映し出されるシーン。有機的に脈打つブラウン管テレビに、奇妙ながらも官能的な唇と喘ぎ声。そこに取り込まれていくマックス。
こんなに変なんだけど、確かにそこにはエロスがあって、吸い込まれるような欲動に溢れている。こんなシーン、観た事ない!

期待を遥かに超えた作品でした。
クローネンバーグ作品は少し敬遠していましたが、もっと観てみよう!!
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