フラハティ

ヴィデオドロームのフラハティのレビュー・感想・評価

ヴィデオドローム(1982年製作の映画)
4.1
メディアに侵されていく我々。


裏に流れているスナッフビデオ。
通称やべぇビデオこと“ビデオドローム”
暴力、残虐、エロなど刺激を求めるために、誰もが“ビデオドローム”を望んでいる。
これからのメディアでは残虐な世界が求められる。

『スキャナーズ』で人気を博したクローネンバーグが、当時のメディアを通した世の中と概念を描いた作品。
あまりにも難解で一般受けはせず、後にカルト的人気を獲得することとなる本作。


変容してきたメディア。
本作が公開された当時はビデオテープが主流で、現代のように表から裏まで多くの世界が顔を覗かせることは少なかった。
メディアは生活を豊かにしたと同時に、欲求を増大させる何かを生み出しているのではないか。
ビデオドロームも、電波をジャックすることで盗み見るという時代を感じる設定。

ビデオドロームを見た人間は、幻覚の世界に誘われるという何ともSFチックな内容。
現実が幻覚と混ざっていくことで、観てる側としても重層構造になっているようで複雑。
メディアは、人が何でも求めているものを提示してくれるが、それは人間を豊かにしてくれるものなのか。
ビデオテープにより、崩れていく自我という存在。
彼らが望む「新人間」とは一体何か。


過剰な残酷さを求めるという、メディア社会によって生まれた人間の欲求というもの。
本作も後半に向かうにつれ、残虐さやグロさが増えていく構造というのも面白い。
80年代のお世辞にも綺麗とは言えない特撮感とか本作ではいとおしくて、序盤のしょうもなさから後半の複雑さと緻密さが本作の魅力。
クローネンバーグの哲学と、創造性に乾杯。
フラハティ

フラハティ