まーしー

モンスターのまーしーのレビュー・感想・評価

モンスター(2003年製作の映画)
4.5
実在した娼婦アイリーン(シャーリーズ・セロン)。彼女はバーで偶然出会ったセルビー(クリスティーナ・リッチ)と恋に落ちる。しかし、その出会いと恋によってアイリーンは悪の道へと突き進んでいく――。

当時28歳のシャーリーズ・セロンの怪演がハンパない。「南アフリカの宝石」とも称される美貌とスタイルは本作では皆無。ぽちゃっとした体型と、あばただらけの顔。どう見ても28歳には見えない。
そして、時には衝動的に下品な言葉を発するなど、お世辞にも上品とは言えない役回りを演じきっていた。さすがはカメレオン女優と評されるだけのことはある。

対するクリスティーナ・リッチも印象的。『アダムス・ファミリー』の時と比べて大人びているものの、どこか自立しきれない女性をうまく演じていた。

この演技派女優2人が主演するだけでも鑑賞に値する作品だが、内容もなかなか見応えあるものだった。
本来なら、アイリーンはセルビーとの出会いによって、再起を図るチャンスを得たはず。しかし、彼女は結局のところ売春から足を洗うことができなかった。むしろ、より重い罪を犯してしまう。
その理由のヒントとして描かれていたのが、彼女の生育歴。幼少時の家庭内の不和によって、彼女は一般的な倫理観を醸成できず、結果、犯罪に手を染めてしまった。
そして、その弱さにつけ込むように彼女を食い物にする男性たち。彼女を「人」としてではなく、「性欲のはけ口」として扱う男性の姿に、嫌悪感を覚えてしまう。

そんな彼女に待ち受ける人生の末路。色々な人に裏切られてきた人生で辿り着いた終着駅。
最後は信頼を寄せていたはずの「あの人」にまで裏切られてしまう。
描かれている彼女の半生は決して同情できるものではないが、社会に潜む闇を垣間見ることができた。

ネット情報によれば、シャーリーズ・セロンも子どもの時に家庭内暴力を経験しているようだ。また、同性愛に対する理解も深い様子。
だからこそ、本作のテーマや脚本に共鳴し、あの怪演に繋がったのかも知れない。

主演女優たちの熱演に加え、重厚なストーリーも味わえる本作。
内容は重いが、一見の価値はあると思う。