けんたろう

ランド・オブ・プレンティのけんたろうのレビュー・感想・評価

ランド・オブ・プレンティ(2004年製作の映画)
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ブッシュの頭をぶっ叩くおはなし。


争いに心を蝕まれてしまった叔父さんと、生きる悦びを噛み締めて生活を送る姪っ子、また周囲の大人たち。彼らのドラマの中で、カメラはアメリカの正義を主観的に、世界何十億人の真実を客観的に見つめ、さらにそれらの視点を逆転させることで、現代にはびこる問題を炙り出す。
9.11被害者への鎮魂歌にして、傲慢なアメリカ、それゆえに憐れなアメリカを描いた秀作。

…と言いたかったのだが、ついこないだ観たばかりの『悪い奴ほどよく眠る』と同じような所がどうも引っかかる。過去をペラペラと話す場面だ。それまで丁寧に作られている分、こういう場面はどうしてもダサく感じてしてしまう。確かに、その場面は映画にとってすごく大切であろう。それは重々承知。けれども、それだけにもっと別の表現のしようがあったのではと思えてしまう。

しかし、「ランド・オブ・プレンティ」が現実に打ちひしがれる主人公を包むように、表現の仕方を残念に思う僕の気持ちも、そのテーマソングは包み込んでくれた。
目からも耳からも入ってくる、この豊かで貧しき国の映画は、最後に心に到って溶けてゆく。とても味わい深い作品であった。