茜

ポストマン・ブルースの茜のレビュー・感想・評価

ポストマン・ブルース(1997年製作の映画)
3.9
ひょんなことから麻薬の運び屋&殺し屋と間違われ、警察とヤクザから追われる郵便配達員の話。
とは言え主人公である配達員の沢木は自分がそんな事件に巻き込まれているとは露知らず、勝手に巻き込まれ勝手に追いかけ回されているという…。
結末も含めて不条理で悲しい話だなぁと思ってしまったんだけど、無我夢中でチャリを漕ぎ疾走する沢木の真っ直ぐな姿には何だか心洗われるような気持ちになる。

90年代の映画なもんで、当たり前だけど俳優陣皆さん若い。
主人公の堤真一も初々しいし、何より寺島進のピチピチ具合には笑っちゃいましたよ。
麿赤兒の組長役はどんぴしゃハマってるし、何故か私の好んで観る邦画に高確率で出演している大杉漣も相変わらずの圧倒的存在感で、本当に良い俳優さんだなぁとしみじみ。
この映画のお話自体は結構めちゃくちゃで突拍子もないんですけど、彼等の好演技で不思議とスルスル惹き込まれちゃう。

ただ黙々と郵便物を仕分けて夜遅くまで配達し続けるという淡々とした日々を送る沢木、自暴自棄になり配達すべき郵便物を持ち帰り飲酒しながら手紙を覗き見る。
何とも非常識な行為ではあるんだけども、そんな中にも自らの運命をガラリと変える出会いが隠れているんだから、世の中分からんもんで。

ヤクザに小指を届ける為に走り、殺し屋に殺し屋選手権の不合格通知を渡す為に走り、余命いくばくもない女性との約束を果たす為に走る。
無気力な日々を送っていた沢木が、大切な人に出会い、自らの仕事の素晴らしさを知り…からの口がポカーンと開いちゃうようなあっけないラスト。
最初はその結末に只々呆然としちゃったけど、徐々に切なさとか温かさの入り混じった何とも言えない気持ちが込み上げてくる不思議な映画。

自分はこんなに真っ直ぐがむしゃらに突っ走って生きていけるだろうかと思う。
茜