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柳生一族の陰謀のギズモXのレビュー・感想・評価

柳生一族の陰謀(1978年製作の映画)
4.8
【徳川の下におって武士道も糞もあるかい】

『仁義なき戦い』の深作欣二による武士道なき時代劇。
当時下火だった時代劇に、実録ヤクザシリーズのリアリズムを取り入れて再起復活を図った作品。
江戸時代を舞台にギラついた野心と策略が激突する群像劇。

《徳川二代目将軍、徳川秀忠が急死。
空いた将軍の座を巡って秀忠の子息の家光と忠長が対立し、様々な勢力を巻き込みながら血を血で洗う一大抗争にへと突入していく。
その裏では家光の家臣、柳生宗矩の暗躍があった》

秀忠が生きていたら忠長がなっていたであろう将軍の座を家光一派が何がなんとしてでも獲ろうする様は正に、
"親に会えば親を殺し、仏に会えは仏を殺す"
といった所。

忠長側に付く浪人の将軍が印象に残る。
敗北を決した中で放たれる魂の叫びは、下らない権力争いであっけなく捨て駒になってしまった己の無念を表しているのではないか。

「俺は死なんぞ!
 次の戦まで死んでたまるか!」

大勢の屍の山を出したこの抗争は、宗矩の子息である柳生十兵衛によって、歴史に反逆した結末を迎えることとなる。

『仁義なき戦い』では広能が山守を討つことは最後までなかった。
『バトルロワイアル』ではキタノはクラスの生徒達を殺し合わせて自殺に近い形で死んでいき、その目的を達成させた。

そう思うとこの終局は、数多の恨みを晴らさんとする天下に唾を吐いた文字通りの"下克上"なのであり、僕の心を掴んで離さないのである。

「夢でござぁぁぁぁぁぁぁる!」
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