川田章吾

エンド・オブ・デイズの川田章吾のレビュー・感想・評価

エンド・オブ・デイズ(1999年製作の映画)
4.2
これは、キリスト教の知識がないと日本人にはなかなか分かりにくいテーマなんじゃないかなと思う。ただ、エンターテインメントとしては十分成立していたし、アイコンとしてのシュワちゃんをうまく使っていたと思う。
前知識がないと分かりにくい作品なので、ちと解説。

そもそも今回の設定は「心の戦い」である。悪の誘惑と戦う姿は『失楽園』でも描かれているが、キリスト教を理解する上でのポイント。
そもそも、なぜイエスは十字架に架けられたのかというと、それは人間たちの罪の贖いであり、アダムとイブ以来人間たちは罪を犯す存在とされているからだ。

実際に悪魔は罪へと人間を誘惑するシンボルであり、今回の映画に出てくる悪魔も強姦し殺しを楽しんでいる。シュワちゃん演じるジェリコも何度も死んだはずの家族を蘇らせると悪魔に誘惑される。悪魔はささやく。

「神は何もしない。試練を与えるだけだ。あんなのは信じるな」と。

しかし、ここがポイントで、なぜ神は苦しんでいる人に何もしないのか。それはアブラハムやヨブの信仰心を試したように、「神を信じなさい」と人間を試しているからなのである。
実際にジェリコも家族が強姦に襲われ死んでしまったために、「神は見捨てた」と信仰心を捨ててしまう。そして、彼は「心よりも銃」を手に取り、悪魔と立ち向かうのだ。
ただ、悪魔の力は想像を絶するよりも強く、兵器では太刀打ちできない。そのため、ジェリコは、神を信じ、イエスのように自ら生贄となることで「自分の信仰心」を証明したのである。
つまり、これは肉体派で鳴らしてきたシュワちゃんだからこそ意味のある物語なのであり、このキャスティングはとても素晴らしいと思った。

また、なんだかんだでアメリカだなと思ったのは教会批判もちゃっかりしてるってこと。バチカンから遣わされた人々は神の使徒として振る舞ってるけど、結局ベンサム的な最大多数の最大幸福を願って、クリスティンを手にかけようとする。
これ、まさにやってること悪魔と同じでしょ。

ただ、文句があるとしたら、最初のヘリコプターのシーンかな。犯人捕まえるのに、ヘリコプターを一回ビルの合間に着陸させて離陸して追いかけるってまどろっこしいし、このシーンのアクションもあんまりだった。

ただ、作品として描きたいことは綺麗に描けていたので評価は高い。キリスト教、少し勉強しといて良かったなと思った。
川田章吾

川田章吾