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ストロンボリ/神の土地のyoichiroのレビュー・感想・評価

ストロンボリ/神の土地(1949年製作の映画)
3.5
11月29日 DVDで鑑賞
イタリアン・ネオ・リアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニがハリウッドからイングリット・バーグマンを迎えて撮ったが、撮影中にこの二人の不倫騒動を起したりした曰くつきの作品。
素人を使ったセミ・ドキュメンタリーが特徴であるネオ・リアリズモ作品に、その対局にあるハリウッドの大女優を主人公に据えたという挑戦的な作風だ。難民のヒロインが生き残るためにイタリア兵と結婚したところ、「故郷は島」という彼の実家は火山が時々噴火する荒涼とした離れ小島。ついた途端に、村の人達の閉鎖的で保守的な様子を見て、「こんなの聞いてない!こんなとこ住めるか!」とブチ切れ、何とか暮らそうとするものの現代的で奔放なヒロインは村では浮きまくり、女性達から排斥、男性から興味深々な目で見られ、頼りの夫とも価値観の違いが露になって、話もかみ合わないという追い詰められた状況になる。住みはじめて間も無く、「ここから逃げたい!」と英語で叫びながら、村の道を走りまわる姿は"価値観の相違"みたいな生易しい言葉で表現出来ない、断絶を感じさせる。
一種の格差婚みたいな設定で今でもありそうな気がするが、火山島のムラ社会の重苦しい雰囲気が全編に横溢していて、嫌な人は生理的に嫌になるだろう。そんな中、漁師達のマグロ漁は1940年代のイタリアの漁業を伝える貴重な映像かもしれない。そして、火山の噴火で村中が一斉に海上避難する様子は、生々しい映像だった。
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