ぱんぴー

奇跡の海のぱんぴーのレビュー・感想・評価

奇跡の海(1996年製作の映画)
3.5
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ドッグヴィル」など、女性を容赦なく過酷な状況に陥らせるMr.サディスト、ラース・フォン・トリアー監督の傑作。

まるで少女のように純粋で敬虔な主人公のベスが次から次へと不幸に見舞われるお話なのですが、なかなか一概に不幸と言えないところにこの映画の真髄あり。

海上油田で働く夫の帰りを神に祈れば、夫が「半身不随」で帰ってくるし、夫も死を選ぼうとしても身体が思うように動かないため上手くいかない。
とにかく神の立場にいる監督のサディストっぷりが際立つ展開がまあ続く。登場人物の願いを聞き入れる耳があるとは到底思えません。

しかしもしかしたらそんな中でも、ベスにとって神と等しき夫の声に耳を傾け、ただただ夫を救うために行動し続けたベスは幸せだったのかもしれないとも思うし、これが真の信仰というべきものなのではと思いました。

側から見たら、盲目で狂っていて、愛というものに非常に依存した生き方にしか見えませんが、まさに宗教って自分にとってはそんなイメージ。

でもそれで他人や自分を救うことができるのならば、それを不幸とは呼べんよなとちょっぴり考えさせてくる辺り、やはりラース監督、侮れん。
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