セッセエリボー

エレニの旅のセッセエリボーのレビュー・感想・評価

エレニの旅(2004年製作の映画)
4.7
うとうと鑑賞。『帰郷』が本調子じゃないというのがやっとわかった、アレはかなり外部からのいろんな制約でやりたいことをやれてなかったんだなと思う。片時もじっとしない長回しが素晴らしい。たとえば家に向かっていく人物を追ってゆっくりと曲線的にズームしてゆくときに家の二階の窓のカーテンが一斉に開かれたりする、こうした瞬間が画面と物語に同時に動きを与え、カットを割るのとは全然違った語りのスタイルを形成している。風や水の連続変化を呼び込むために村ひとつ作ってしまう黒澤的職人魂に圧倒されるが、木に羊がぶら下がっているショットが風ひとつなく静まり返っているのがことのほか印象的だった。ラストの手紙が泣けすぎる。「夢で君と川のはじまりを探しに行った。そこには小さな草むらがあり、葉から水が滴り落ちた。たくさんの葉からわずかな水が滴り落ちて、それがやがて大きな川となっているんだ」