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魚と寝る女のBONのレビュー・感想・評価

魚と寝る女(2000年製作の映画)
4.0
第57回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。第37回百想芸術大賞新人女優賞では主演女優のソ・ジョンが受賞、第6回モスクワ国際映画祭審査委員特別賞受賞作品。

各国の映画祭などで称賛された一方で、その痛々しく残酷な描写から失神者や嘔吐者が続出した決して万人には受け入れられない問題作。過激なサディズムとロマンチシズムが融合した詩的映像作品。人間の持つ暴力性を見せつけられて、月曜日から鉛がのしかかるような疲労感を感じて大変満足して。

釣り場で身体を売って暮らしていた女の元に、自分の人生を終わらせるために恋人を殺してしまった元警官の男が現れ、やがて激しく求め合い、傷つけ合い、転落していく物語。

湖の上で繰り広げられる惨劇の数々。「釣り針」が銀幕の中で重要なアイテムとなっており、男は一握りの釣り針を飲み込み、自殺を図る。女は離れゆく男を取り戻すために、一握りの釣り針を…。

淡いブルーやグレー、グリーンなどの美しい自然の中で、真っ赤で鮮やかな血液が噴き出す。釣り針を引っ張り上げて助け出す様は、他人本位の意思によって救済・もしくは破滅を得る、まさに人間が「魚」となるような不気味さがあった。

そして釣り針よりも個人的に衝撃を受けたのは、魚を切除したり命を奪う拷問のようなシーン。表面の肉を大きく削ぎ落とされ、そのまま削がれた魚が水に放たれて泳ぎ続けるシーンや、苛々した男が生きた魚を釣り、怒り任せに何度もナイフでぐちゃぐちゃに切って、血まみれの断片にしているなどの描写。

主演女優のソ・ジョンは作中で一言も言葉を発しないミステリアスで艶かしい女の役を演じているが、耽美的な湖の映像とマッチしていて美しく儚さを感じた。

孤立してそれぞれが浮かんでいるような孤独感は原題『島』そのものを意味し、ラストシーンでの人間の身勝手さや暴力性、愛の脆弱性を感じて打ちのめされた。
BON

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