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戯夢人生のmingoのレビュー・感想・評価

戯夢人生(1993年製作の映画)
4.0
東京フィルメックスにて20数年ぶりに上映されると聞いて、他の特集やコンペ部門蹴ってまで観たフンクイの少年と本作。至高の映画体験だった。ついでに生侯孝賢トークショーとくりゃ行くしか…いや逝くしかない。

まともなレビューのやつ1人もいねえ…寝ちゃうのわからなくもないけど、映画における表現の醍醐味を味わえないなんて本当に勿体無い。
内容はある一人の人形芝居をする男の半生が描かれるのだが、言葉で語るのが申し訳ないくらい人形師李天祿氏本人自らのナレーションを挟みながらゆったりと進む物語に注視するのみであった。

フィックスを基本とするロングでの長回しからはしたたかで、たくましく、そして伸びやかな人間の芯が見え隠れする。
トークショーでは黒澤明監督作品のスクリプターを長く務めた野上照代氏が当時の現場の人たちと新年会で普通はおめでとうと挨拶するところを、戯夢人生を見たか?と一番に聞いてたというようなお話はそれだけ当時から侯孝賢は映画人に愛されていたことがうかがえる。

また侯孝賢は黒澤明に「画面にいつも子どもがうろうろしている。なぜあんな風に撮れるのか」と訊かれたらしいが、演技は基本人に任せたい派だが黒澤監督はスターを中心にした撮影所制度の中で撮っていたので、そのような違いが生じたのではないかと分析してたのも興味深かった。

あとは原節子さんが亡くなったことに関して監督は合う俳優を見つけるとずっと使ってしまうとおっしゃっていたが、小津映画にとっての原節子、侯孝賢にとってのリーさんしかりスーチーさんであり、監督と名優の関係を語っていたのも印象深い。

とにかくラストカットの夕暮れの田園風景は往年の絵画のようで、現実はこんなにも美しいんだと思わざるを得ない絵、途轍もない。映画の核を理解するには一度では足りないのでもう一度観たい一本。傑作。