侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『戯夢人生』(英語題:The Puppetmaster)は1993年の台湾映画。日本語字幕版が入手できなかったので、英語版を視聴。英語の字幕に多少の問題があるものの、セリフが少ないことや、語りの部分を除いては、映画のストーリー展開を追うには、個々のセリフの完璧な理解が必要ないことから英語での視聴でも、まずOKではあった。
時代背景は、主人公の誕生した1895年から、1945年の日本敗戦直後まで。人形芝居・布袋戯の名手である李天祿(リー・ティエンルー)の半生の話なのだが、映像化されているのは、単に食事をするシーンや、劇中で演じられている芝居の一部、といった本筋の展開に関係のないものが大部分を占める。主人公に関わる大きな事件は、現在の本人が回想という形で語られるのみであることが多い。
142分の上映時間は、スローな日常シーンが多いので冗漫に感じることがあるが、これは侯孝賢の前作「悲情城市」にも共通する。ちなみに、李天祿は、「悲情城市」では家長の老人役で出演している。
本作で重要なのは、日本の占領下の台湾の生活がどのようなものであったかが垣間見られるシーン。日本語による会話が所々に登場。人形芝居でも、日本軍に参加し「天皇陛下万歳」と言って英米と戦って死ぬ戦意高揚を目的とした台湾兵の物語が、日本語でなされ、それを地域住民が直立して観劇している(させられている)シーンが登場。敗戦後の最終盤では、日本軍の戦闘機らしい飛行機が、機体を構成するアルミニウムの売却を目的に解体され、その金が人形芝居への支払金となるシーンが登場。台湾が日本から解放されたことの象徴であり印象的。他に、本作では、亜熱帯の感染症であるマラリアに家族が罹患する話が後半に登場。その他にも、病気・死・治療方法に関する土着的・呪術的な話がありユニーク。