うめ

アクロス・ザ・ユニバースのうめのレビュー・感想・評価

アクロス・ザ・ユニバース(2007年製作の映画)
3.7
 近頃はスターウォーズが盛り上がりを見せていますが、私は完全傍観者。2、3年前に1977年公開の『スターウォーズ』を観たのですが…ハマらなかった(笑)ジョゼフ・キャンベルの英雄の旅を検証する、スターウォーズが受けた/与えた影響を見るといった興味はあるので、将来的に観ます。でも、これってハマるきっかけがなかったというのもあるけれど、「世代」っていうのも大きいと思う。私の親は(新旧)スターウォーズにハマる世代じゃなかったし、私もその世代に当てはまってなかった。全てを世代で片付けることはしたくないけれど、でも結構大きい要素を占めてる気がするのです。

 そう考えると、ビートルズも「世代」じゃない。幼い頃から彼らの曲を色んな所で聞いて(聞こえてきたと言ったほうが正しいかな)、何となく有名な曲は知ってるという程度。だから、実際にビートルズの曲が、まだビートルズとして活動しているときにどんな風に聴かれていたのかは全くわからない。その時代の空気を知らない。だが、今作はその当時を、多くの若者たちが感じたビートルズに感じた思いを追体験させてくれる作品だ。

 舞台は1960年代のアメリカ。リバプールから父親を捜しにやって来たジュードとアメリカで知り合った友人マックスとその妹ルーシーを中心に、時代に翻弄されながら生きる若者たちをビートルズの名曲に乗せて描くミュージカル作品。ベトナム戦争、公民権運動、同性愛、ドラッグ…戦前から戦後へと世代交代を促す流れに乗り、若者が大きなパワーを持ってデモや暴動、あるいはドラッグなどを繰り返していた時代。ジュードがマックスと出会いニューヨークに居を構えるまでは、導入部分としてややおとなしい演出だが、中盤からはマックスのベトナム出兵やルーシーの反戦活動の激化といった時代を表すような出来事に沿って、サイケでぶっ飛んだ演出が登場する。こうした演出が1960年代の空気感を表していたような気がする。

 そこに合わさるビートルズの楽曲が素晴らしい。もちろん楽曲自体の素晴らしさがあるのだが、まるでこの映画の登場人物たちのために書いたかのように歌詞や曲調がぴったりと合ってしまうのには驚いた。ビートルズの曲の持つ力を極力活かした形を採っているのだろう、歌詞がメロディと共にすぅーっと入ってくる。

 ビートルズはベスト盤を時折聴くぐらいだが、だいだい流し聞きで歌詞をしっかりと見たり読んだりしたことはなかった。だが、今回歌詞を見て、シンプルだが強いメッセージのある曲たちばかりなのだなと知った。メッセージと言っても、聴く側によって色んな捉え方ができるようになっている。口ずさみやすいし、単語もシンプル…ちょっとビートルズ、聴き直さなきゃと思いました。多くの方がビートルズ、ビートルズっていう意味も今なら何となくわかります。

 それで鑑賞後ちょっと調べてみたら、今作の様々な設定がビートルズやビートルズの曲をモチーフにしているんですね。主人公のジュード始め、登場人物の名前の大半は歌詞や曲のタイトルが由来だし、ジュードはリバプールで母子家庭で育ったというのもどこかジョン・レノンの生い立ちを連想させるし、終盤の屋上ライブは実際にビートルズもやったらしいし…ファン歴が長ければ長いほど、色々なオマージュに気がつくのだと思います。

 ただサイケな演出が全面に出ているせいか、若者たちそれぞれの物語の印象が薄くなってしまっているのが残念。あと、もう少し歴史的な出来事や人物を絡めながら描いても面白かったのかなぁと。でも、何をしても結局、ビートルズのインパクトには勝てない気がしますが(笑)

 あぁ、こうして書いている今もビートルズを聴いているのだが、1960年代に思いを馳せると…ぐっと来ますね。もっとビートルズに詳しくなったらまた観ようと思った作品でした。


 あれ?『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』『マンマ・ミーア!』『シェルブールの雨傘』『ANNIE/アニー』『魔法にかけられて』と、ミュージカルはあんまり好んで観ないのに結構観たな、今年(笑)