一夢

アクロス・ザ・ユニバースの一夢のレビュー・感想・評価

アクロス・ザ・ユニバース(2007年製作の映画)
3.1
ビートルズの名曲をふんだんに使った、60年代末のアメリカ〜イギリスを舞台に、ベトナム戦争に巻き込まれていく若者たちを描いたミュージカル映画。
使われている曲はビートルズなので、勿論名曲!なのだが、大好きなバンドなので以下、辛口で力の入ったレビューを。

・良い点
曲が良かった!
と書くと、それビートルズの手柄やんけで終わってしまうが、彼らの曲を現代風にアレンジしたり、そのシーンにあった使い方をしたりで、新鮮に感じられることが多かった。
好きだった曲が更に好きになったり、そんなに好きではなかった曲が大好きになったりと、個人的にはかなり発見が多かった。
登場人物達にビートルズの曲名に因んだ名前が付いていたり、ビートルズに絡めたエピソード、60年代大物アーティストを彷彿とされるキャラクター(個人的にはジム・モリソンのポジションも欲しかった…)が出てくるのも面白い。

・悪い点
ミュージカル映画にありがちな、このシーンいる??と突っ込みたくなる下りがあまりにも多すぎる。
特にDr.ロバート周辺のエピソードは完全に蛇足なので全削除しても良いと思う。ボノは黙ってOneを歌ってろ(U2ジョーク)。
恐らく、マジカルミステリーツアーを意識させる作りにしたのだとは思うけれど、何度観ても必要な下りとは思えなかった。
ベトナム戦争に関する描写も、過剰なCGで悲壮感が薄れて、完全におまけとしか感じられなかった。

良くも悪くも、最良の楽曲だけしか残らなかった中身の薄い映画という印象。
それでも、曲のチョイスは素晴らしいので、印象に残った曲について。

All My Loving
初期の最高傑作と信じている曲。
イギリスとアメリカで、それぞれのカップルが恋人に別れを告げるシーンで流れる、最高の使い方が歌詞とリンクしていて素晴らしい。

With A Little Help From My Friends
この映画を観てから魅力に気付けた曲。
ビートルズ1の愛されキャラのリンゴ・スターが「友達の助けで何とかやっていけるよ」と歌う歌詞そのままに、友人達と馬鹿騒ぎをするシーンで使われる。
コーラスが魅力的な曲なので、ミュージカルとの相性は最高!

Come Together
ミュージカル調なダンスと相性の良い曲だと思う。初めての土地に来て不安な気持ちを煽るような曲調が良かった。

Helter Skelter
ビートルズで一番ヘヴィな曲。
ジャニスを思わせるセディの声と、ジミヘン風ギタリストのジョジョのプレイとの相性が素晴らしい。

I Want You(She's So Heavy)
徴兵ポスターの標語であるI Want Youと歌詞を絡め、自由の女神を背負った若者達がShe's So Heavyと呻くシーンは、かなり面白い解釈だと思った。
こういう使い方は上手い。

Something
ビートルズのメンバーで一番好きなジョージ・ハリスンを代表する、所謂ジョージ3大名曲の一角。
使われるシーンも、歌詞の訳し方も文句無しだが、アレンジの仕方に最高に文句あり。
この曲はサビを経ての切ないギターソロが、短い中にもジョージの人柄を感じさせる優しい音を鳴らしているのに、そこに全く焦点が当てられていない。

While My Guitar Gently Weeps
ジョージ3大名曲の一角。
想い人にしてバンドのヴォーカルを失ったジョジョが、切なくギターを弾くシーンで使われる「おれのギターがむせび泣く」にマッチした曲で、相手を思う歌詞もかなり合っている。
ただしこの曲も、泣きのギターソロありきなので、歌に比重を置くミュージカルとは相性が悪いのかもしれない…。
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