No.4[連続映画、それは圧倒的映像体験] 90点
坂本安美さん応援企画。ゴーモン特集の予習としてこの圧倒的映画について書いてみることにする。想い出記録。
内容は、新聞記者フィリップが悪の集団”ヴァンピール一味”を戦うというよくある話なのだが、これが製作されたのは一次大戦中のフランスだし、テレビドラマのようなテンポの良さやクリフハンガーは見事としか言いようがない。中でも、ヴァンピール一味の紅一点であるイルマ・ヴェップの魅力は特筆に値する。彼女の靭やかな身のこなしや変幻自在さに当時のシュールレアリストたちが熱狂したのも容易に理解できる。オリヴィエ・アサイヤスが「イルマ・ヴェップ」という映画を撮っていることはこの際気にしない。
世界初の女流監督アリス・ギィに才能を見出されたフイヤードは、彼女の結婚に際して後任に充てがわれた。彼がゴーモンで監督した映画は600本を超えるらしい。その中でも彼のキャリアの中心を占めているのが「ファントマ」、本作品、「ジュデックス」などの連続映画だ。当時、アメリカでハーストが大ヒットさせたパール・ホワイト主演の連続映画がフランスに上陸し、映画に対する主導権を取られたことを危惧したゴーモンは主力監督であるフイヤードを投入し、上記のような上質でエンタメ性の高い連続映画を数多く作った。それから彼は1925年に亡くなるまで連続映画を撮り続けた。どれも日本で今後公開されることはないだろうから、ゴーモン特集に足を運ぶべきであることは明白だ。
頑張る新聞記者といえばタンタンなんだろうけど、エルジェもおそらく本作品に多大なる影響を受けているはずである。ただ、助手のマザメットというおっさんが意外に大活躍するのがムカつく。フィリップ頑張れよ。