明石です

たたりの明石ですのレビュー・感想・評価

たたり(1963年製作の映画)
3.6
「出る」との噂が絶えず、そこに住んだ人が必ず3日以内に出ていくというイカニモな幽霊屋敷に目をつけた文化人類学者が、心霊現象を証明しようと、シックスセンスを持つ女性2人を連れて屋敷の調査をするお話。

シャーリー・ジャクスン(『ずっとお城で暮らしてる』の人だ!)の怪奇小説を原作に、職人監督ロバート・ワイズが手掛けた幽霊屋敷ホラー。“You may not believe in ghosts, but you cannot deny terror.”「あなたは幽霊を信じないかもしれないが、恐怖は否定できない」という秀逸なキャッチコピーに惹かれ鑑賞。普通に面白かったけど、現代のホラーに慣れてしまった目では、否定できないほどの恐怖は感じなかった。

入居者が3日以内に必ず云々と、なんだか島田秀平の怪談みたいな話ですが、そこに科学的現地を持ち込み、心霊現象の「解明」をすることが物語の根幹になっているあたりは、さすが欧米的な発想だなと思う(10年ほど後の『ヘルハウス』は物理学で幽霊屋敷の謎を暴く話だったし)。日本だとそこまで乾いたリアリズムは中々持ち込めない。少し主語が大きいようですが、しかし新大陸を「発見」したことで有名なクック船長が、そこに辿り着いたことよりも、同じ船にダーウィンを乗せていたことの方を評価される世界ですからね。

作中には幽霊そのものは出てこず、心霊現象に怯える女性の顔つきや、何かに取り憑かれたらしい人の異様な言動、そして、向こう側から押されたようにたわむ扉を接写することで、見えない恐怖を煽る徹底して職人気質な手法が目を惹く。幽霊そのものよりも、極限状態であぶり出される人間心理のダークサイドにフォーカスした作風ですね。原作が文学作品らしい気の利いた会話は耳に心地良く、また、ハッとさせられもする。こういう映画最近少なくなったなあ、と思わなくもないけど、そういえばサイキンの映画あんまり見てないんだった、、と気づいたのでお口チャックします。
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