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たたりのRのレビュー・感想・評価

たたり(1963年製作の映画)
4.1
丘の上に立つ不気味なお屋敷に、とある一家が引っ越してくる。以来、家族が次々と謎のむごたらしい死に見舞われる。当時少女だった生き残りの娘はやがて老婆となり、村娘を世話人として雇っていたが、その娘の過失により死亡。世話人の娘はそのまま屋敷を引き継いだものの、謎の自殺を遂げる。数々の死の舞台となったその屋敷は、一体呪われているのだろうか。謎を解明すべく住み込みで研究を試みる文化人類学者マークウェー、彼に誘われて研究に参加するエレノア、セオ、ルーク。エレノアは10年以上母を介護し、母が死んだあと、姉と一緒に暮らしながらも邪魔者扱いされている年増女。彼女を中心にこの館で起こる怪奇現象を、直接的に霊などを登場させることなく、映像の演出とカメラワークのみで描いた、かなり変わったホラー映画。(音も派手ではあったけど怖さを盛り上げるという点ではそんなにやったかな。) 謎の心霊が彼らに迫りくる不気味なシーンが満載で、鳥肌が立つほどゾゾっとくるシーンもいくつかあり、純粋にホラーな映画でありながら、見方によっては、ほとんどすべてエレノアのヒステリアに見えるようになっている。母を死なせてしまった罪の意識を、老婆の世話人だった村娘のそれと重ね、この館のなか以外に自分が所属できる世界はないとかたく心を閉ざしているが故に、精神のバランスが常に危うい状態にある。その上、そこに人の心を読める特殊な能力を持つ女性セオが加わり、ふたりが心を通わせることによって、集団的ヒステリアのきっかけができてしまう。さらにややこしいことに、恋心までが絡んできて……と、とにかく、幽霊とかそういう話以上に、エレノアの苦悩する魂が前面に押し出されていて、やかましいくらい心情がナレーションで語られる。よって、単純にお化け屋敷の怖い話ってわけではなく、人物と霊的現象の精神的なリンクを感じさせる、ダブルの意味でスピリチュアルな作品となっている。ただ、この映画を好むか否かは、会話と心の声の多さをどう感じるかによるところが多そう。いちいち説明的なところが多いことは否めないが、思ってることが明確に分かるからこそ、エレノアの心理ドラマが強調されるというのも確か。個人的には、全体的にもうちょい少ない方が好みかなぁと思った。が、陰影の深いゴシック調のうつくしい映像はほんとに絶品なので、見る価値しかない。古典ホラーの傑作っすね。
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